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糖尿病患者へのフットケア普及進まず 岡山県内の地域リーダー育成へ

岡山大病院のフットケア外来では料治さん(左)と高樽さんが丁寧なケアを続けている。だが、糖尿病患者へのフットケアは県内ではまだまだ浸透していない

 血糖値の高い状態が続いて末梢神経や血流の障害が起き、足のけがが治りにくくなって化膿(かのう)、壊死(えし)してしまう糖尿病患者への「フットケア」の普及が進んでいない。糖尿病は“予備軍”を含めて推計患者数は2200万人。その重要性は高く、医師らでつくる「岡山フットケア研究会」は県内の地域リーダー育成に向けた研修会を初めて企画するなど、普及に力を注いでいる。

 「この傷はどうされました?」「痛いところはありませんか?」

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)のフットケア外来。慢性疾患看護専門看護師の高樽由美さんと糖尿病看護認定看護師の料治三恵さんが女性患者(84)に優しく話しかける。この間、2人の手は止まらない。皮膚と爪の間の掃除、爪切り、たこ削り…。丁寧に丁寧に進めていく。

 女性は「足の裏は自分ではとても(ケアが)行き届かない。月1回のこの時間が楽しみ。本当に感謝しています」と話した。

 2008年の診療報酬改定で、糖尿病で足に潰瘍ができるなどの病変があり、壊死などのリスクが高い患者をケアすると、「糖尿病合併症管理料」が月1回まで算定されるようになった。岡山大病院のフットケア外来も同年に開設。これまで延べ約200人が受診し、現在は約20人が通院する。

人材不足 

 しかし、外来設置や専門ケアに取り組む病院は少なく、榊原病院(岡山市北区中井町)など県内に10カ所程度という。

 原因の一つが人材の問題だ。国は専任の医師、またはその医師の指示で専任の看護師が行うように規定。看護師であれば誰でもケアは可能だが、実際には糖尿病が足に及ぼす影響などを学び、足に合った正しい靴の選択方法といった指導ができなければならない。

 これらに精通し、臨床現場でリーダーとなれるのは、2年間の大学院を修了しなければならない慢性疾患看護専門看護師、専門機関で6カ月以上の研修が必要な糖尿病看護認定看護師たちだが、その数はごくわずか。全国の就業看護師(約111万6千人)のうち同専門看護師は84人、同認定看護師は555人しかいない。

 加えて患者1人のケアには30分から1時間かかるが、診療報酬は1700円と低く抑えられ、専任者の配置には病院側の理解が必要だ。「1人でも多くの患者さんの足を守るため、今後も普及活動などに努めていきたい」と高樽さん。

環境の整備 

 もう一つの原因には医療従事者も含めた認知不足がある。

 県内の血管外科医3人が07年、岡山フットケア研究会を発足させ、年2回ほど勉強会を続けてきた。「メンバーは50人ほどに増えたが浸透はまだまだ」と立ち上げに携わった諸國眞太郎クリニック(岡山市北区錦町)の諸國眞太郎院長。

 次の一歩として、地域でリーダーとなる看護師を育成しようと、同研究会は23日、フットケア外来の運営方法に関する講演や事例検討などを行うセミナーを岡山大で開く。

 諸國院長は「フットケアは皮膚科、整形外科、血管外科などの連携が重要。当面は医療機関で普及させ、いずれは在宅を含め、地域でフットケアチームをつくる環境を整えたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年11月21日 更新)

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