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尿意を感じることが素晴らしい 慈圭病院 看護副部長 秋山千広

溝に見えても仕方のない病院の廊下

 「尿意」は非常に高度な機能です。尿意を感じて難なく排尿を毎日している私たちにはその高度さを意識することがありません。

 認知症の方が尿意を感じても見当識障害や失行でトイレを探し出せなかったり、衣類をうまく扱えなかったりすると、失禁状態になります。

 放尿という言葉も使います。トイレがここだと思って廊下の隅や電話ボックスにすることです。しかし、私はその状態を喜ばしいことと思います。その行動には「尿意」という機能が残存しているからです。

 あるとき、トイレを探して廊下を行ったり来たりしている患者さんがいました。あっと思った時にはまるであぜ道にするかのように排尿されていました。患者さんは満足気な表情です。

 そこに近寄ったスタッフの行動はというと、拍手していたのです。おしっこして拍手とは妙な光景でしょうが、嬉しかったんですね。私は、こんな所にしては困りますというメッセージは嫌いです。失った機能を試すようなことも嫌いです。それがスタッフに伝わっていた瞬間を見て私も拍手しました。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年11月26日 更新)

タグ: 慈圭病院

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