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(5)岡山リハビリテーション病院 回復期リハビリ病棟でチーム医療

開放感のある病棟食堂・談話室はリハビリにも活用されている

理学・作業療法室を統合し広くなったリハビリテーション室

(右から)鼠尾祥三院長、森田能子診療部長、光藤美樹リハビリテーション部長、井上美智子看護介護部長

 窓から陽光を受け、入院患者が運動療法などに励む。場所は看護師や介護士が常駐する病棟内の食堂・談話室。リハビリテーション室でのメニューと共に新病院が力を入れている「病棟リハビリ」の一こまだ。

 2011年11月、岡山市中区奥市から新築移転したリハビリ専門病院。「患者さんが未来に希望を持ち、意欲的にリハビリに取り組めるよう、病院らしくない、明るい病院を目指した」と鼠尾祥三(ねずおしょうそう)院長は説明する。

 なるほど院内は木材が多用され、壁を彩る風景や動植物の絵、栃木県・益子焼のタイル画に心が和む。屋上庭園に行けば岡山市街、南には児島湾や金甲山(403メートル)を展望できる。

 入院患者の7割は脳卒中、3割が大腿(だいたい)骨頸(けい)部骨折など運動器疾患。急性期治療を終え1カ月前後で転院してくるが、障害や将来の不安からうつ状態の人も多い。心癒やす工夫を凝らしたのはそのためで、広々と開放感のある造りにも投影されている。

 鉄筋コンクリート6階延べ約8千平方メートルで、床面積は旧病院の約1・9倍。理学・作業療法室を統合しリハビリ室は約1・2倍の約540平方メートル、通所リハビリ室は倍近い約240平方メートルに拡張した。

 病床数は129で変わらないが、回復期リハビリテーション病棟を2病棟(91床)から3病棟(全床)へ拡充。スタッフを増員し、車いすでも移動しやすいよう病室やトイレ、食堂、廊下を広くした。

 入院中の回復期リハビリ、退院後の機能維持・向上を目的とした在宅支援が2本柱。「回復期から生活期まで、切れ目のないリハビリサービスを提供できる」と鼠尾院長。

 入院中は寝たきり防止、社会復帰を目指し毎日2~3時間、集中的にリハビリを行う。それも医師、看護師、介護士、セラピスト、管理栄養士、歯科衛生士、ソーシャルワーカーら多職種が連携し、チーム医療を進める。12年度の平均在院日数は72日、在宅復帰率は74%。

 日本リハビリテーション医学会専門医の森田能子(よしこ)診療部長は「これまでの生活に戻れるよう心身ともに支援する。退院後は訪問リハビリ、通所リハビリや、外来診療にも対応している」と話す。

 セラピストは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の計92人。脳卒中では、片側の手足のまひだけでなく、記憶や判断ができない、失語症といった高次脳機能障害、摂食・嚥下(えんげ)障害など深刻な後遺症を合併することがある。

 理学療法士は起床から歩行まで、作業療法士は食事、トイレ動作、着替え、言語聴覚士は発語や飲み込みの練習を365日行う。光藤美樹リハビリテーション部長は「退院前は患者さん宅を訪れ、障害に配慮した手すりの設置、段差解消なども助言する」と言う。

 日常生活が自然にリハビリとなる院内環境を整え「トイレ、歯磨き、更衣などは極力、自力でできるようサポートする」と井上美智子・看護介護部長。胃ろう、経鼻栄養、認知症の患者にも優しく寄り添っている。

◇ 岡山リハビリテーション病院(電話086―274―7001)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年12月16日 更新)

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