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肺がん治療薬イレッサ 胸水で有効性判断  岡山大助手ら 新検査法を開発

豊岡伸一助手

 副作用で死亡例もある肺がん治療薬イレッサの効果を、患者の肺にたまった胸水から事前に判断する検査法を、岡山大大学院医歯薬学総合研究科腫瘍(しゅよう)・胸部外科(伊達洋至教授)の豊岡伸一助手(38)らのグループが開発した。これまで検査が難しかった進行肺がん患者に適用でき、患者の身体的負担が大幅に軽減される。二十五日から東京で開かれる日本呼吸器外科学会で発表する。

 イレッサは、がん増殖にかかわるタンパク質の遺伝子「EGFR」に変異を持つ患者(腺がんなど非小細胞肺がん患者の約三割)に効果があるといわれる。しかし、効かない患者は副作用で死亡するケースが相次ぎ、ここ数年は投与前に手術で切除した肺がん細胞から変異の有無を調べる検査が主に行われている。

 開発した検査法は、治療時に採取した胸水からDNAを抽出してEGFRの変異を検出する。高感度に変異を見つける働きを持つ酵素を加えることで実現した。手術ができない進行肺がん患者は細胞を採取しての検査ができないため、効果のない投薬が行われるケースもあった。

 有効性を確かめるため、イレッサを投与した患者二十九人の胸水を調べたところ、腫瘍が縮小したり、増大が止まった十人は遺伝子変異が検出され、効果がなかった十九人には変異がなかった。

 豊岡助手は「胸水でイレッサの効果を予測することが実証でき、従来の方法と比べより進行した肺がん患者も検査できる。個々の人に適した治療を目指し、積極的に活用していきたい」と話している。


患者に朗報だ

 光冨徹哉・愛知県がんセンター中央病院副院長(胸部外科)の話 肺からがん細胞を直接採取するのはリスクが高く、胸水で効果を予測する手法の確立は意義がある。患者にとって朗報だ。


ズーム

 イレッサ 分子標的薬といわれる新タイプの抗がん剤。がん細胞の増殖にかかわるタンパク質を狙い撃ちし、がんを抑えたり縮小させる。肺がんの約8割を占める非小細胞肺がん患者のうち、再発したり、従来の化学療法が効かない患者に使用。英国のメーカーが開発し、日本では2002年に承認。厚生労働省などによると、劇的に効く患者がいる一方、副作用の間質性肺炎などで国内で600人以上が死亡している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年05月25日 更新)

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