海外から手術依頼増 岡山大病院の肺移植
国内トップクラスの肺移植の成功実績を誇る岡山大病院(岡山市北区)。その評判を頼りに、海外からの患者の手術依頼が増えている。昨年10月には同病院で香港から訪れた男児の生体肺移植に成功。さらにエジプトやパキスタンといった政情不安を抱える地域から要請もあるが、渡航に危険を伴うことから、2011年に脳死移植を成功させたスリランカの病院を拠点にした治療も検討している。
「歩いたり、買い物したり。普通の生活が楽しくて楽しくて。また学校に通うことができるのもうれしい」
12月上旬、岡山大病院の診察室。執刀した大藤剛宏肺移植チーフの診察を受けたウイルソン君(13)ははじけるような笑顔を見せた。
ウイルソン君の父は英国人、母は日本人で香港で暮らす。12年に突然、白血病を発症し、骨髄移植を受けた。一命を取り留めたものの、移植細胞が体を異物として攻撃する移植片対宿主病を肺で発症してしまった。
ネットで検索
香港の病院で治療を続けていたウイルソン君は主治医から「肺移植しか助からない」と告げられる。だが、香港では技術的に優れた肺移植医が見つからなかった。
「手術さえ受けられれば…。何とか方法はないか」。母親(39)は香港以外での手術を考え、インターネットで検索。見つけ出した肺移植に関する情報のほとんどは、岡山大病院に関するものだったという。
日本で最速の100例達成、高い成功率、自身がドナー(臓器提供者)になれ、順番を待たなくてもいい生体移植の実績…。「岡山大に頼んでみよう」。家族は決意し、母親は13年6月、ホームページに掲載されていた大藤チーフのアドレスにメールを送った。
ほどなくして大藤チーフから診察を快諾するメールが届く。家族4人は9月、精密検査のため、岡山大病院を訪問。その結果、父親がドナーに決まり、手術は10月に行われた。術後の回復も良好で、ウイルソン君らは12月下旬に帰国した。
自力移動困難
同大病院は11年11月、スリランカの病院にチームを派遣し、同国初となる肺移植を成し遂げた。機器などがそろわず、慣れない環境下での手術もチームの高い技術力で乗り切った。
肺移植を望む患者は呼吸機能が低下しているため、自力での移動が困難な上、一刻を争うケースが多い。このため、大藤チーフらは依頼があれば国内はもちろん、海外にも往診に出掛けている。
そんな大藤チーフの下には近年、ルーマニアや台湾などから手術依頼が舞い込む。今、進行中の症例はパキスタンやエジプトの患者だ。ただ、両国は政情が安定しておらず、スリランカのように移植チームの派遣は難しい面もある。
そこで考えられた対応策が、手術実績のあるスリランカの病院を拠点にするという方法だ。「アジアやアフリカに肺移植を根付かせるきっかけにもなる。何としても実現させたい」。国内のみならず、海外の患者も救う。大藤チーフの夢は膨らむ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。
「歩いたり、買い物したり。普通の生活が楽しくて楽しくて。また学校に通うことができるのもうれしい」
12月上旬、岡山大病院の診察室。執刀した大藤剛宏肺移植チーフの診察を受けたウイルソン君(13)ははじけるような笑顔を見せた。
ウイルソン君の父は英国人、母は日本人で香港で暮らす。12年に突然、白血病を発症し、骨髄移植を受けた。一命を取り留めたものの、移植細胞が体を異物として攻撃する移植片対宿主病を肺で発症してしまった。
ネットで検索
香港の病院で治療を続けていたウイルソン君は主治医から「肺移植しか助からない」と告げられる。だが、香港では技術的に優れた肺移植医が見つからなかった。
「手術さえ受けられれば…。何とか方法はないか」。母親(39)は香港以外での手術を考え、インターネットで検索。見つけ出した肺移植に関する情報のほとんどは、岡山大病院に関するものだったという。
日本で最速の100例達成、高い成功率、自身がドナー(臓器提供者)になれ、順番を待たなくてもいい生体移植の実績…。「岡山大に頼んでみよう」。家族は決意し、母親は13年6月、ホームページに掲載されていた大藤チーフのアドレスにメールを送った。
ほどなくして大藤チーフから診察を快諾するメールが届く。家族4人は9月、精密検査のため、岡山大病院を訪問。その結果、父親がドナーに決まり、手術は10月に行われた。術後の回復も良好で、ウイルソン君らは12月下旬に帰国した。
自力移動困難
同大病院は11年11月、スリランカの病院にチームを派遣し、同国初となる肺移植を成し遂げた。機器などがそろわず、慣れない環境下での手術もチームの高い技術力で乗り切った。
肺移植を望む患者は呼吸機能が低下しているため、自力での移動が困難な上、一刻を争うケースが多い。このため、大藤チーフらは依頼があれば国内はもちろん、海外にも往診に出掛けている。
そんな大藤チーフの下には近年、ルーマニアや台湾などから手術依頼が舞い込む。今、進行中の症例はパキスタンやエジプトの患者だ。ただ、両国は政情が安定しておらず、スリランカのように移植チームの派遣は難しい面もある。
そこで考えられた対応策が、手術実績のあるスリランカの病院を拠点にするという方法だ。「アジアやアフリカに肺移植を根付かせるきっかけにもなる。何としても実現させたい」。国内のみならず、海外の患者も救う。大藤チーフの夢は膨らむ。
(2014年01月06日 更新)