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(2)カテーテルアブレーション 心臓病センター榊原病院 循環器内科 内科部長 伴場主一

ばんば・きみかず 愛知県立千種高、岡山大医学部卒。倉敷中央病院、岡山大学病院、高知医療センターなどを経て、2009年10月から心臓病センター榊原病院に勤務。日本循環器学会専門医、不整脈専門医。

【図2】CARTO3システムを使用した、CT画像上での肺静脈周囲焼灼後の画像。赤丸部がアブレーション部

 カテーテルアブレーションという言葉は聞きなじみがないかもしれませんが、不整脈に対するカテーテル(細い管)を用いた治療のことです。不整脈の治療としては、薬の治療を第一に考えられるかもしれませんが、薬は不整脈の原因の場所だけに効果を発揮するものではなく、心臓全体に影響してしまいます。心拍数を減らしすぎたりしないよう、心臓の機能を損なわないよう、大きな合併症を起こさないように気をつけながらの専門的な使用になります。

 一方でカテーテルアブレーションは治療用のカテーテルを血管内に挿入していく方法ですので侵襲的な治療ではありますが、不整脈の原因になる場所のみに高周波で通電することによって不整脈が治療できることになります。長期間のメリットは非常に大きいものになります。以前は薬の効果が減り不整脈の発作で困った場合にカテーテルアブレーションを2番目に選択することも多かったですが、治療の1番目にカテーテルアブレーションを選択する場合も多くなってきました。

 カテーテルアブレーションの最大の魅力は根治性があることです。薬の服用が永続的に必要である場合や、定期的に検査が必要な病気も多いですが、カテーテルアブレーションでは治療が成功すれば生涯同じ不整脈で困ることがなくなる場合も少なくありません。治療対象となる不整脈によっても異なりますが、治療時間は1〜4時間で治療後もカテーテル挿入部の圧迫で数時間が必要ですが、外科手術に比べると体の負担が少なく刺し傷しか残りませんので、治療の翌日からほぼ普通の生活が可能となります。治療後の通院も少ない場合が多いです。不整脈治療では、両足の付け根、頚部(けいぶ)など複数箇所からのカテーテルの挿入を必要とする場合が多いですが、榊原病院では少ない穿刺(せんし)場所からのカテーテル挿入を心がけ、心房細動では基本的に右足の付け根のみから治療を行っています。

 もともとは、発作性上室性頻拍や心房粗動がカテーテルアブレーション治療の主な治療対象でしたが、現在では心房細動が中心となりつつあります。心室期外収縮や心室頻拍などの心室性の不整脈にも治療を行い、一部では心室細動に対するカテーテルアブレーションも行われています。

 10年前まではカテーテル治療の対象になりにくかった心房細動が治療の中心となりつつある理由は、心房細動が最も頻度の多い持続性不整脈であることもありますが、不整脈の機序(仕組み)の理解や医療機器の進歩により治療成績が格段に向上してきたこともあり、脳梗塞を併発する可能性のある不整脈ですので、治したいと考える人も多いことにもよります。

 心房細動では心房全体がけいれん状態となってしまいますが、その原因の多くが肺静脈の中と心臓と肺静脈の境界部に90%程度存在することが分かってきたため、その部分をしっかりと治療することにより発作性の心房細動の大半が改善するようになってきました。

 カテーテルアブレーションでは1回の通電で2〜3ミリの焼灼巣(しょうしゃくそう)を作成します。心房細動では直径約2センチ前後の肺静脈の入り口を全周性に治療を行う必要があるため、30〜60カ所以上の通電が必要になり、他の不整脈に比べ治療箇所の範囲が広く時間を要する場合が多いです。そのために心房細動では再発も比較的多く2回目の治療が必要になることもあり、1回の治療での成功率上昇も課題となっています。当院でも現状で10人中1〜2人が2回目の治療を受けられております。

 将来的にはホットバルーンなどの新しい技術による治療が時間短縮に役立つかもしれませんし、さらに現在使用可能な医療機器やカテーテルの改善も予定されており、今後も治療成績の向上が期待できる分野と思われます。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年01月21日 更新)

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