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(1)岡山ハートクリニック 上川滋内科医長 心臓カテーテル治療

カテーテルを手にした上川医長。「治療は安全、迅速に行うことが大事」という

 心臓表面を走り、ポンプ機能を担う筋肉(心筋)に酸素と栄養を送る冠動脈。直径約2〜4ミリの血管内が、上川の闘いの舞台だ。

 動脈硬化が原因で、この血管が狭くなる狭心症、さらに詰まって心筋が壊死(えし)する心筋梗塞。命を脅かすこれらの虚血性心疾患に、直径約2ミリの管・カテーテルで立ち向かう。

 治療は局所麻酔をし、主に手首、時に太ももの動脈からカテーテルを挿入。指で巧みに操作し、冠動脈まで1〜2分で到達させる。造影剤を注入してエックス線撮影し患部を確認、心筋梗塞の場合は血栓(血の塊)を吸い出す。さらにカテーテルに超音波装置を通し、血管の硬さや病変の範囲を調べ、ヤマ場に入る。

 カテーテル先端の風船を膨らませ、患部を押し広げ血流を回復させる。動脈硬化が進行した高齢者、糖尿病患者であれば一層注意を払う。「あまり高い圧で広げると血管が破れる」と慎重を期す。

 慢性完全閉塞(へいそく)となると難度は高まる。病変が石灰化し硬い上「長さが10センチ近く詰まっている例もあり、造影剤では血管の走行状態が見えない」。そこで二の矢三の矢を放つ。

 超音波画像などを見ながら、カテーテルを先導する髪の毛ほどの針金・ガイドワイヤを徐々に進める。行き詰まれば血管の反対側、あるいは双方向から攻める。「通常より硬く先のとがった物を選び、2本用いたりして“貫通”を目指す」

 ただ、風船療法だけでは約4割が再び狭くなる再狭窄(きょうさく)を起こす。そのため患部にステント(金網状の筒)を併せて広げ、留置する。

 「従来のステントは再狭窄率が約20%だったが、免疫抑制剤が塗られた薬剤溶出ステントは3%前後に改善した」と説明。「ステントの再狭窄には5月ごろから、薬剤を血管内壁に染み込ませる風船療法が保険診療で行える見通し」と話す。

 カテーテル治療は30分〜1時間ほどで済み、入院は狭心症が2〜3日、心筋梗塞が1週間程度。昨年は141例に行い、通算実績は約千例を数える。

 その基礎は2002年に赴任した心臓病センター榊原病院で、村上正明(現岡山ハートクリニック副院長)らに学んだ。日々の症例から腕を磨き、前任地・岐阜ハートセンターの院長上野勝己、副院長松尾仁司から高度な技と知識を吸収した。

 信条は「目の前の患者さんに全力で臨む」。38歳。頼もしい専門医が頭角を現した。

(敬称略)

◇ 岡山ハートクリニック(岡山市中区竹田54の1、電話086―271―8101)

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 かみかわ・しげし 兵庫県立龍野高、高知医科大(現高知大)医学部卒。岡山大第一内科に入局後、心臓病センター榊原病院、住友別子病院(愛媛県新居浜市)、岐阜ハートセンターなどに勤め、2012年7月から現職。日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会認定医。趣味は「思い通りにいかないのが魅力」というゴルフ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年02月03日 更新)

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