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「術中MRI」で脳腫瘍除去 岡山大病院脳神経外科

脳腫瘍を除去した後にMRI室に患者を運び込むスタッフ。手前左は専用麻酔装置で、奥の大きな装置がMRI

 岡山大病院(岡山市北区)の脳神経外科は、外科手術中にMRI(磁気共鳴画像装置)で脳内の状況を確認し、脳腫瘍を取り除く「術中MRI」に取り組んでいる。正常な部分をできるだけ切らずに、腫瘍をほぼ完全に除去することが可能で、術後の生存率向上にも寄与。同大病院によると、岡山県内での導入は初めて。

 岡山大病院によると、他の臓器の腫瘍を切除するとき、完全除去のために正常な部分まで切ることがあるが、運動や言語などさまざまな機能をつかさどる脳の場合、正常な部分を避けて慎重に切除。結果として腫瘍が一部取り残されることがあるという。

 「脳腫瘍は肉眼では正常な細胞との見分けがつきにくく、その境界の判断はベテラン医師でも難しい」と脳神経外科の伊達勲教授は説明する。取り残しがあった場合は従来、放射線や抗がん剤での治療を術後に行う必要があった。しかし、術中MRIは完全除去ができたかどうかをすぐに確認し、残存があれば再び切除する。

 昨春稼働した同大病院の総合診療棟1階では術中MRIのため、手術室とMRI室を隣接させているほか、MRIが出す強力な磁気に影響を受けない麻酔装置などを導入した。昨年6月から試験運用し、1月から本格的にスタート。症例数は11例になった。

 1月中旬には脳腫瘍の高齢女性に対して実施。執刀医の市川智継・脳神経外科講師が、術前のMRI画像を基に作った切除範囲を示す画像に沿って、開頭した患者から約3時間かけて腫瘍を取り除いた。その後、患者を専用ストレッチャーに乗せてオープン型MRIがある隣室へ。脳腫瘍が白く映る造影剤を投与して画像撮影し、白い部分がないことを確認。完全除去できたと判断し手術を終えた。撮影の所要時間は約20分だった。

 術中MRIは、高度な安全管理技術が求められるほか、手術室とMRI室が隣接していることが必要で、専門チームの編成なども欠かせない。このため、同大病院によると、全国での実施は十数病院だけ。市川講師は「術中MRIは取り除くべき腫瘍の範囲がリアルタイムで判断できる。有効活用したい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年02月17日 更新)

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