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脳死移植 女性患者が死亡  岡山大 術後も肺機能せず 

 岡山大病院(岡山市鹿田町)で、脳死肺移植を受けた後、重篤な状態が続いていた中国地方の四十代女性は二十七日夕、出血多量による多臓器不全と移植肺の機能不全で死亡した。

 女性は心臓に穴が空いた状態で肺への血流が増え、肺高血圧症となるアイゼンメンジャー症候群。金沢大病院で脳死と判定された五十代男性から提供された両肺の移植を二十六日に受けた。術後も胸部の出血が続き、移植肺もほとんど機能せず、人工心肺を付け、集中治療室(ICU)で治療を受けていた。

 会見した執刀医の伊達洋至教授は「出血コントロールができなかったことはこれまで一度もなく、残念な結果で断腸の思い。心よりご冥福をお祈りする」と述べた。

 岡山大病院での脳死肺移植は九例目で、術後治療中に患者が死亡したのは二例目。生体も含めると四例目。

 日本臓器移植ネットワークなどによると、全国で脳死肺移植を受けた患者二十八人のうち、十九人が生存している。


「困難な条件重なる」 病院会見

 「止まらない出血と移植肺の機能不全という困難な条件が重なってしまった」―。女性患者死亡を受けた岡山大病院移植チームの会見で、伊達洋至教授は「これまで自分が手掛けた移植手術の中で最も難しく、この結果が悔しい」と声を詰まらせた。

 女性は過去の胸部手術がもとで肺と周囲の組織が激しく癒着。手術中に剥離(はくり)する際、大量出血し、手術後も止まらなかった。伊達教授は「見えにくい心臓の裏側も癒着しており、実際に手術してみるまで状況は分からなかった」と厳しい表情で振り返った。

 移植肺の機能不全については「10~20%の確率で発生する」と説明。出血の処置に手間取ったことから、移植は通常のケースより遅れたが「機能不全はそのことが原因とは思えない」と述べた。

 女性は二〇〇一年に待機患者登録。今回の移植を大変喜んでいたという。アイゼンメンジャー症候群は肺移植手術の中で最も難しいケースであることに触れ「今回は現在における移植医療の限界点と感じた」と唇をかんだ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年05月28日 更新)

タグ: 健康女性岡山大学病院

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