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(7)岡山赤十字病院 心臓や脳中心に血管内治療強化

本館3階のカテーテル室に立つ医師ら。4月から1階のIVRセンターでも血管内治療を始める

(左から)忠田正樹院長、佐藤哲也循環器内科部長、中西浩之心臓血管外科部長、小野田惠介脳神経外科部長

「マザー・ホスピタル」を目指し機能強化が進む本館

 救命救急センターを持ち、岡山県南東部の中核施設である岡山赤十字病院(500床)。急性期医療の中でも心臓、脳疾患領域の躍進は近年目覚ましい。

 「目標は地域住民、連携する病院や診療所に信頼され親しまれる病院、いうなれば母親のような『マザー・ホスピタル』です」と忠田正樹院長。そのため救急医療をがん診療と並ぶ強化の柱に据え、循環器、脳神経系の充実を図ったという。

 心臓病では、循環器内科がカテーテル治療を担ってきた。心臓の冠動脈が詰まる心筋梗塞、細くなる狭心症に対し、手首や太ももから血管内に直径約2ミリの細い管・カテーテルを挿入。患部で風船を広げ、ステント(金網状の筒)を留置し血流を保つ。昨年は232例を数えた。

 課題は外科手術だった。執刀医不在で長らく途絶えていたが2012年6月、心臓血管外科が開設され昨年5月、手術を再開。カテーテル治療が難しい患者に冠動脈バイパス手術を行うなど、治療の幅を広げた。

 弁膜症手術なども手掛け、腹部大動脈瘤(りゅう)には12年から、カテーテルを用いて人工血管を留め置くステントグラフト内挿術も開始。中西浩之(こうじ)同科部長は「高齢や合併症で開腹術が困難な人も行え、回復が早い。胸部大動脈損傷にも適用していきたい」と語る。

 循環器内科に好影響も与えた。佐藤哲也同科部長は「外科のバックアップ体制ができ、重症患者に転院を強いることもなく、自己完結型の治療が可能になった」と話す。

 最たるものが、ロータブレーターによるカテーテル治療。血管内で石灰化し硬くなった病変を、高速回転するダイヤモンドのやすりで削る。万一の場合に開心術ができる外科医の常駐が必要だったがクリアし、近く実施予定。

 それに先立ち昨年から、不整脈に対するカテーテルアブレーション(心筋焼灼(しょうしゃく)術)、下肢の閉塞(へいそく)性動脈硬化症へのカテーテル治療も本格化させている。

 脳疾患領域も進境著しい。昨年、脳腫瘍摘出術など311例を手掛けた脳神経外科の先駆的な取り組みは、脳動脈瘤の覚醒下クリッピング手術。脳動脈にできたこぶの根元に金属クリップを挟み、破裂を防ぐ術法を患者の意識がある状態で行う。合併症を防ぐ狙いで、運動感覚機能に異常がないか患者に確認しながら進める。

 診療機能は4月から一段とアップする。脳血管内治療外科を新設し、脳卒中科には常勤医が復活。さらに、全身の血管内治療に当たるIVR(インターベンショナル・ラジオロジー)センターを立ち上げる。

 佐藤部長をセンター長に循環器内科、心臓血管外科、脳神経外科、脳血管内治療外科、肝臓内科、放射線科、救急科、外科の8科で構成。本館1階に最新の血管撮影装置を導入し、体の負担が少ない治療を推進する。

 副センター長になる小野田惠介・脳神経外科部長は「脳動脈瘤を開頭術でなく、カテーテルを使って瘤内に金属製コイルを詰めるなど、症例に応じ最適な治療を提供できる」と力説する。

◇ 岡山赤十字病院(電話086―222―8811)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年03月03日 更新)

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