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(2)失語症のリハビリテーション 岡山リハビリテーション病院 言語聴覚士 足立里恵

足立里恵言語聴覚士

失語症とは

 失語症は中枢性の言語障害で、脳卒中や頭部外傷によって、に示す左大脳半球の言語野が損傷された場合に生じる後遺症です。同半球のその他の部位やまれに右半球損傷でも発症することがあります。

 通常、私たちは言葉を用いて会話をしていますが、失語症になるとその言葉を用いたコミュニケーションが取りにくくなります。具体的には、相手が話している言葉の意味が理解できない、自分が伝えたいことを言い表す言葉が出てこないといった状態になります。また、それに付随して文字の読み書きも難しくなります。

リハビリテーションの進め方

 言語聴覚士が行うリハビリをご紹介します。まず、患者さんとの会話や鑑別診断から失語症の有無を確認し、続いておおよその言語能力を把握します。

 理解面については、簡単な問いかけを聞いただけで分かるのか、表意文字である漢字を併用することで理解が促進されるのか確かめます。

 発話面については、あいさつ言葉やご本人、ご家族の名前、職業などが自発的にもしくは復唱的に発語応答できるか、何らかの意味のある言葉の発話が可能かどうかを確認します。発話応答が難しい場合には、問いかけの際に文字提示した語句の指さし応答や○・×などの記号の指さし応答(Yes/No応答)ができるか見ていきます。その様子から、どのような手段を用いれば会話が成立するか把握します。ご本人としても会話が成立することが実感できると、心理的にも安定し機能回復訓練に臨む意欲が増してきます。

回復期とその後のリハビリ

 脳卒中後の後遺症の回復で特に重要なのが発症から半年で、通常は回復期リハビリテーション病棟を有する病院で集中的なリハビリを受けていただきます。リハビリ病棟での入院期間は重要な時期ですので、十分な時間を費やして機能回復訓練を実施します。ご家族には訓練場面に同席していただき、症状や会話の方法についても理解していただきます。

 どれくらいの訓練期間が必要なのかは人によって異なりますが、失語症については比較的長期にわたって回復が見込まれる特性がありますので、外来等で継続してリハビリを行うことがあります。

復職にあたって

 近年は若くして脳卒中や事故で失語症になる方も多くなっています。言語面の障害は、少なからず仕事を行う上で支障を来す可能性があります。職場復帰にあたって、言語能力に応じた職務内容の調整が必要となる場合があります。また、福祉制度の活用なども検討する必要性も考えられます。主治医をはじめ担当の言語聴覚士、医療ソーシャルワーカーと十分に相談しながら、望ましい復帰ができるように進めていきましょう。

予後を決定する要因

 失語症の回復には、まず原因となる脳の損傷領域の部位と広がりが影響します。次に適切な言語訓練を継続的に行うことが重要ですが、経過には、発症時の年齢や合併症の有無、基礎疾患の治療に加え、普段の日常生活での会話の機会の多さや趣味などを通して活動的な生活を送れているかどうかなどさまざまな要因が影響してきます。

患者会への参加を社会復帰へのステップとして

 言葉が不自由な方にとって、同じ悩みを持つ方々との交流は社会復帰への貴重な機会となります。たとえ言葉に詰まっても、同じ失語症の方同士であれば気持ちを通い合わせることができるはずです。また、患者会はご家族同士の交流の場にもなります。他の方がどのようにご本人を支え家族の絆を深めているか、参考になるお話も聞けると思います。

 当院では失語症友の会の支援を行っています。

 岡山失語症友の会「コスモス」(事務局代表=岸田茂樹・織田修弘)

 連絡先=岡山リハビリテーション病院(電話086―274―7001)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年03月17日 更新)

タグ: 脳卒中福祉

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