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(6)心臓と血管を救うこと 心臓病センター榊原病院 山本桂三循環器内科副院長

やまもと・けいぞう 広島大付属福山高、岡山大医学部卒。香川県立中央病院、福山市民病院などを経て1998年10月から心臓病センター榊原病院勤務。2008年8月から同病院循環器内科、副院長。医学博士。日本心血管インターベンション治療学会指導医、頸動脈ステント指導医、日本下肢救済足病学会評議員、日本脈管学会専門医、日本血管外科学会認定血管内治療医。

動脈硬化を起こした血管の断面。左側が細くなった状態、右側は完全に詰まった状態

PWV―ABI検査結果表(血管年齢など)

長寿国ニッポンでの寿命と死因

 日本人の平均寿命は男性が79・94歳、女性が86・41歳で、日本はまさに世界有数の長寿国、高齢化社会となりました。総務省のデータでは、65歳以上の人口が総人口に占める割合は約25%で、過去最高となっています。

寝たきりになる原因は?

 高齢化社会とはいえ、誰もが「たとえ長生きしても、寝たきりになるのはいやだ」と考えます。では、どんな病気になると「寝たきり」になるのでしょうか? 最も密接に関与しているのが動脈硬化です。日本人の死因の第1位はがん、第2位が心臓病ですが、がんで寝たきりになることはまれで、動脈硬化で心臓が弱ったり、脳や手足の血管が詰まって体が動かなくなると寝たきりになります。「健康のまま長生きをする」ためには動脈硬化を予防することが大切です。

動脈硬化の原因あれこれ

 動脈硬化の原因は、糖尿病、たばこ、血圧、コレステロール、遺伝、生活習慣などさまざまです。糖尿病があると、健康で若々しく暮らせる寿命「健康寿命」が男女とも約15年も短くなり、糖尿病のない人に比べて心筋梗塞に2〜4倍なりやすくなります。たばこを吸うと、血管が本来持っている「血管をみずみずしく保とうとする機能(血管内皮機能)」が一気に悪くなり、血管の内側に傷や血栓、カルシウムが付きやすくなります。血圧が高いと常に血管に圧力、刺激がかかるので、血管が痛みやすくなります。原因が多いほど、動脈硬化も重症になります。

全身の血管、特に足の血管を守ろう

 体のあちこちに動脈硬化があると、病気が再発しやすくなり、寿命が大幅に短くなります。首の血管(頸(けい)動脈)は全身の血管の代表選手と呼ばれ、超音波で検査すると簡単に全身の動脈硬化が推定でき、心臓病や脳卒中になりやすいかどうかがわかります。足の動脈硬化は、本来ある人間の活動性を低下させ、運動が不足することで内皮機能が落ちて心臓や脳の血管が詰まりやすくなります。「足は第2の心臓」とも呼ばれ、足が悪いとリハビリも困難となり、「寝たきり老人まっしぐら」です。

足の血管の病気「閉塞性動脈硬化症」

 足の動脈硬化を「下肢閉塞性動脈硬化症(PAD)」と言います。PADは70%が無症状で、検査しないと見逃されます。PADがあると、がんになった状態とおなじくらい寿命が短くなると言われています。足が冷たいとか痛いとかの自覚症状がなくても、かかりつけ医で簡単な足の検査を受けましょう。アメリカのガイドラインでは、65歳以上の人は全員、足の血流や血管年齢を簡単にチェックするPWV―ABI検査をすべき(糖尿病の人や、たばこを吸う人は50歳以上)とされています。

生活習慣を改善し、動脈硬化を予防しよう

 動脈硬化を予防して心臓病や脳卒中を防ぐには、生活習慣の改善が非常に重要です。生活習慣が悪いと、動脈硬化だけでなくアルツハイマーリスク、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)リスクなども上昇します。日頃の生活習慣、動脈硬化の管理をかかりつけの先生と一緒にきちんと行い、もし異常が見つかれば心臓血管専門病院で手術やカテーテル治療で血管を治療し、リハビリをおこないましょう。

 以下のような日頃の生活習慣のケアが、長寿遺伝子を活性化させ、寿命を延ばします。

 ・バランスのとれた食事をしましょう。揚げ物、焼き物を控え、煮物、ゆでものを食べましょう。ファストフードや炭酸飲料を控え、キノコ、繊維質、酢の物を摂(と)りましょう。

 ・満腹まで食べず、腹八分目にしましょう。ネズミを腹ぺこにしたら寿命が延びたという実験データがあります。早食い、まとめ食いをやめて、しっかりかんで、ゆっくり食べましょう。

 ・週3回、30分以上、ウオーキングなどの軽い運動をしましょう。

 ・血圧を測りましょう。

 ・血圧を測る以上に、体重を測りましょう。

 ・腹囲の測定を恥ずかしがらずにしましょう。

 これらを守って動脈硬化を予防し、「健康で、笑顔で長生き」を目指しましょう。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年03月17日 更新)

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