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早期胃がん最新手術法 おおもと病院(岡山市)磯崎副院長に聞く 機能温存へ少ない切除 リンパ節で転移診断

早期胃がんの機能温存手術(図)

磯崎博司副院長(56)

 早期胃がんで、元の機能をできるだけ温存する手術が注目されている。がんが最初に転移するリンパ節とみられる「センチネルリンパ節」の術中診断を基に従来より切除範囲を少なくする手術法。患者は術後も、食事量など生活の質をほとんど落とさずに済むという。この最新手術法について、岡山大医学部で共同研究を実施後、臨床応用している、おおもと病院(岡山市大元)の磯崎博司副院長(56)に聞いた。

 センチネルリンパ節は、腫瘍(しゅよう)から最初のリンパ流を受けるリンパ節。このリンパ節を、検索色素やラジオアイソトープ(放射性同位元素)を用いて手術中に見つけ、がんの転移の有無を迅速に診断。その結果から手術方針を決める方法が研究され、乳がん手術などでも臨床応用されている。

 胃がんのリンパ節転移の有無は、手術中でも肉眼ではほとんど判断できない。しかし「貴重な判断材料となるセンチネルリンパ節を調べれば、転移具合がほぼつかめ、切除範囲の決定に大変役立つ」と磯崎副院長。

 これに基づき、転移がなければ、胃の切除範囲を少なくする▽胃の入り口の噴門や出口の幽門、周囲の神経系を温存する▽がん転移の可能性のあるリンパ節領域のみを取り除く。

 従来の外科手術では、胃の三分の二以上と幽門を切除することが多い。しかし幽門がないと、食物が急に小腸に流入し、めまいや冷や汗などのダンピング症候群が起きる。また胃液が逆流するのを防ぐ噴門、体重維持などを図る迷走神経を切除すると、それぞれ逆流性食道炎による胸やけ、下痢に悩まされる。

 機能温存手術は、腫瘍が四センチ以内の早期胃がんに施す。具体的には開腹する一方、先端にレンズや治療器具の付いた内視鏡を口から胃に入れる。モニター映像を見ながら、腫瘍の周囲四カ所の粘膜下層に色素を注入、色素はリンパ管を通じリンパ節に流入する。

 この際、青く染まる所がセンチネルリンパ節で、平均三、四個を摘出し、転移の有無を病理医が迅速に診断。転移がなければ、腫瘍の上下各二センチの所で胃を短冊状に切除、再発防止のため同リンパ節周辺領域も郭清(切除)、縫合する=別図参照。転移があれば、従来の手術のように広範囲を切除する。

 磯崎副院長は岡山大医学部助教授時代の二〇〇〇~〇二年、同大関連の十六病院で、胃がんでは世界初のセンチネルリンパ節に関する多施設共同研究を実施。この結果では、実際はリンパ節転移があったのに、センチネルリンパ節診断で「転移なし」と判定された割合(偽陰性率)が11%あった。しかし、自身が直接手掛けた症例では偽陰性例はない。

 磯崎副院長は「この手術の実施施設は全国でも少ない。しかし、同リンパ節に関する大規模な臨床研究が開始されており、一般病院に広がっていくだろう」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年04月16日 更新)

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