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パーキンソン病 阿部岡山大教授講演 手足の震え、こわばり、歩行障害… 症状に応じて薬調整

早期パーキンソン病の治療ガイドライン(図)

阿部康二氏

 近年、患者が増えているパーキンソン病。症状としては手足の震えが知られているが、「発病後、症状が年々変化するのがこの病気の特徴」と、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の阿部康二教授(神経内科)は言う。倉敷市で開かれた第4回パーキンソン病フォーラム(全国パーキンソン病友の会岡山県支部主催、山陽新聞社など後援)の講演で、症状経過に応じた治療薬の調整を訴えた。

 パーキンソン病は脳の黒質という部分の神経細胞が減り、ここから出る神経伝達物質のドーパミンが不足するために起きる。発病は五十代以降に多く、患者は全国で十五万人に上るとされる。詳しい原因は分かっていないが、患者は老化に伴う酸化に黒質の細胞が弱いとみられ、過労や睡眠不足が病気を悪化させるという。

 代表的症状が安静時の手足の震えや、筋肉のこわばり、鈍い動き、歩行障害など。「六、七割の患者は震えから始まるが、症状はずっと同じではない」と阿部教授。発病後二年程度で体がこわばり、動作が鈍くなる一方、震えは五年ほどで目立たなくなる。歩こうと思うのに足がすくんで出なかったり、歩き始めると止まれない歩行障害は四、五年目以降の症状で、さらに自律神経症状の便秘などが表れることもある。

 治療は薬物療法が基本。日本神経学会は治療ガイドラインをホームページで公開している=表。その中で主たる治療薬としているのが、脳の中でドーパミンに変わるLドーパと、脳のドーパミン受容体を刺激して、少ないドーパミンを有効に利用するドーパミンアゴニスト。

 「車はガソリンがないと走れない。しかし、エンジンをうまく回らせ効率よく走るにはエンジンオイルも必要だ」。阿部教授は二つの治療薬の役割を車に例え説明した。ガソリンに当たるのがLドーパ、オイルがドーパミンアゴニストというわけだ。

 「かつては発病から十五年くらいたつと、ほとんどの患者が寝たきりになっていたが、ドーパミンを補充できるようになり変わった。今は天寿を全うできる」。病状が進むと、本人が意図しないのに体が動くジスキネジア(不随意運動)が表れたり、薬の効果が薄れるが「主治医と相談し、こまめに薬を調整するのが大事」と言う。

 こうした薬物療法や、並行して行うリハビリは症状を改善する対症療法。根治方法として再生医療などが研究されているが、阿部教授は「進歩しているものの、実際に使えるには少し時間がかかりそう」との見通しを示した。

 あべ・こうじ 1987年東北大大学院修了。米留学や同大助教授をへて、98年から岡山大教授。49歳。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年06月03日 更新)

タグ: 脳・神経健康

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