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(7)MRI対応ペースメーカーとICD(植え込み型除細動器) 心臓病センター榊原病院 大原美奈子循環器内科部長

おおはら・みなこ 香川県立丸亀高、香川大医学部卒。卒業後香川大第二内科(循環器・腎臓・脳卒中内科)入局、小豆島町立内海病院内科、香川大第二内科助教を経て2008年4月から心臓病センター榊原病院勤務、12年4月から現職。日本循環器学会専門医、不整脈学会専門医、植え込み型除細動器/ペーシングによる心不全治療研修証取得。

MRI対応ペースメーカー

 ペースメーカーとは徐脈性不整脈に対する植え込み型医療機器で、本体と心臓内に留置するリードからなり、あらかじめ設定した脈拍を下回ると代わりに打ってくれます。

 ペースメーカーは長年MRI(磁気共鳴画像装置)検査に対応しない植え込み型医療機器とされてきました。MRI検査は脳梗塞をはじめさまざまな疾患の早期発見、治療に利用され、高齢になるほど利用機会の増える検査です。日本では年間約6万人にペースメーカー植え込みが行われていますが、そのうち65歳以上が90%を占め、MRI撮影が必要になる年齢層と一致しています。ペースメーカー植え込み後にMRI撮影が必要になる症例は50%以上とも報告されており、MRI撮影可能なペースメーカーが長年待たれていました。

 日本では2012年10月にMRI対応ペースメーカーが使用可能になりました。ペースメーカー本体とリードはともにMRI対応機種を使用する必要があり、遺残リードがあると使用できないため新規植え込み例に限られますが、植え込み後6週間以上経過すればMRI撮影は可能になります。当院では12年10月以降、約140人にMRI対応ペースメーカーを使用しており、そのうち7人は術後にMRI検査を行いました。

 MRI撮影時にはペースメーカーの設定変更が必要で、機種により撮影条件が異なりますのでペースメーカー植え込みを行った病院に相談することが必要です。一定の条件はあるものの今までは禁忌(医療行為を避けること)とされていたMRI撮影が可能になったことによるメリットは大きいと思われます。

ICDとは?

 致死性不整脈を治療する植え込み型医療機器です。致死性不整脈とは字の通り早急に治療をしないと命に関わる不整脈で、心室細動と心室頻拍の二つがあります。心室細動は最も危険性が高い不整脈で心室が震えるように痙攣(けいれん)するため、左室からの有効な駆出(血液を送り出すこと)ができなくなり、多くの心臓突然死の原因となっています。一方、心室頻拍は心室が規則正しく速く打つ不整脈で、脈拍数や心機能により症状はさまざまで、動悸(どうき)やめまいを感じるものの一人で動ける場合もありますが、意識消失したり突然死する場合もあります。

 では致死性不整脈の危険が高いのはどういう人なのでしょうか? 一般的には心筋梗塞や心筋症などにより心機能が低下している人に起こることが多く、心疾患がない人がいきなり致死性不整脈を起こすことはまれですが、ブルガダ症候群やQT延長症候群など心機能が正常でも致死性不整脈を起こす疾患もあります。

 致死性不整脈を起こした人の多くはICD(植え込み型除細動器)の適応になります。ICDは鎖骨下の皮下に埋め込まれる本体と心臓内に留置するリードからなっており=図1参照、致死性不整脈を検出すると自動で電気ショックなどの不整脈治療をしてくれる医療器具です。特に低心機能例では致死性不整脈による突然死が多く、内服治療と比較してICDは突然死予防に有効と報告されています=図2参照。実際に当院でICD植え込み術を施行した人の追跡調査ではICD作動は34・3%に認めていました。

 致死性不整脈は決して頻度の多い不整脈ではありませんが、突然死を来すことがあるリスクの高い不整脈です。動悸とともに意識消失を伴う場合は致死性不整脈が出現している可能性がありますので、早めに循環器専門病院を受診することをお勧めします。

 植え込み型医療機器の進歩は著しく、徐脈に対する医療機器から始まり、突然死予防のための機種が開発され、最近は心不全やQOL(生活の質)を改善させることのできる機種も出てきています。今後も進歩が期待できる分野でさらに便利な機種が開発されることでしょう。

 =おわり=
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年04月07日 更新)

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