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酒害防げ ネットワーク設立準備  岡山県内の断酒会 学校や医師 連携を提案 依存症の偏見解く

酒害防止のための連携のあり方を議論したネットワークの準備会=5月末、岡山市・岡山保健所

 岡山県内の断酒会が中心となり、「岡山アルコール依存症予防回復ネットワーク」(仮称)の設立準備を進めている。飲酒予防のため中学校で出前講座を行ったり、地域にいる依存症者と家族をいち早く発見、救済するための連携などを計画。“アル中”と呼ばれ、偏見の強い病気への理解を広げる狙いで、全国的にも珍しい試みという。

 津山断酒新生会の金本生理事長らの提案で三月末に準備会を発足。活動方針や連携方法を一年かけて議論し、来春をめどに正式に設立する。

 五月末に岡山市古京町の岡山保健所で開かれた準備会には、断酒会関係者のほか、保健所、精神科病院、民生委員ら二十人が参加。酒害予防の取り組み事例として、倉敷市の中学校で行われている出前講座を紹介した。

 出前講座は、倉敷市保健所が医師と断酒会員を講師として学校に派遣。軽い飲酒体験が自力で抜け出せなくなる依存症へと発展し、家族などを巻き込む様子を生々しい体験談を交えて話すため、生徒からは「アルコールは人生を変えると思った」などの感想が多く寄せられているという。

 同市内の五中学校を対象に行ったアンケート調査では、飲酒体験について「味を試す」も含めて63・9%が「ある」と回答。飲酒の低年齢化に歯止めをかけるため、出前講座を全県的に広げていくことを検討した。

 また、これまでの予防対策が酒害の怖さを伝えることが中心だったのに対し、県立岡山病院の河本泰信医師は「自由にお酒が飲める文化では、依存症者は一定程度出る。怖さやみっともなさばかり強調するのはかえって偏見を強める」と指摘。「(依存症者が)いるのは仕方ないという認識を持った上で、水際の人を救ったり、既になった人の症状の進行を防ぐ方法を探ることも大切」と意見を述べた。

 このほか、精神科以外の医療機関で依存症が見過ごされがちな現状があるとして、内科医や産業医との連携、教育委員会や警察、保護司などにも参加を呼び掛けていくことが提案された。

 金本理事長は「偏見が強いアルコール依存症は、なかなか相談機関に結びつかず、本人も家族も孤立して苦しんでいるケースが多い。いろんな立場の人にかかわってもらうことで早めに対処できる体制をつくりたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年06月10日 更新)

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