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(10)天和会松田病院 チーム医療実践、がん治療と緩和ケアを充実

松田院長(手前中央)を中心に談笑するスタッフ。全職種が連携し患者を支えている

(上段左から)松田忠和院長、岩藤浩典外科医長、岩木俊男麻酔科医長(下段左から)門倉康恵看護認定看護師、小川貴康臨床工学技士

 岡山県を代表する肝臓病の専門病院で知られる。きめ細かいケアが可能な中規模施設のメリットを生かし、近年はがんの根治はもちろん、麻酔科医や看護認定看護師らが連携し、がんの疼痛(とうつう)緩和など、トータルサポートに力を入れる。

 肝がんは他のがんに比べ再発率が高く、治療には高度な専門性が求められる。日本肝胆膵(すい)外科学会から、年間手術実績が50件以上の施設を対象にした「高度技能修練施設(A)」に認定されており、近隣の大規模病院から手術を依頼されることも多い。

 一手に手術を担うのは松田忠和院長。

 開腹による切除のほか、がんに電極針を挿入し熱で焼き切るラジオ波治療、肝臓に血液を運ぶ血管をふさいでがん細胞を兵糧攻めで死滅させる肝動脈塞栓術などを年間約300件手掛ける。

 塞栓術では、抗がん剤を混ぜた球状の粒子をカテーテルを通して血管内に注入する最新のビーズ治療も今年から始めた。より高い治療効果が期待できる一方、すべての症例に効果があるわけではなく、長年の経験に裏打ちされた診断能力が求められるのだ。

 胃や大腸といった消化器がんの治療実績も高い。執刀医の中心である岩藤浩典外科医長は年間約50件を手掛ける。うち、約20件は、低侵襲の腹腔(ふっくう)鏡手術と、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術)と呼ばれる難易度の高い最先端の術式だ。

 岩藤医長は「分業が一般的な大規模病院と違い、検査から診断、治療まで一人の医師がずっと患者にかかわれるのが特徴」と話す。

 他病院で治療できないと言われた末期がん患者が、積極的治療に一縷(いちる)の望みを託して来院するケースも少なくない。「可能性がある限り最善を尽くすのが医師の務め」と松田院長。

 それでも根治できなかった場合、その人が充実した人生を全うできるよう、最期まで寄り添う理念を、スタッフが共有する。

 岩木俊男麻酔科医長は、カテーテルを体内に埋め込み劇的に痛みを抑える硬膜外ポートを年間十数件手掛け、西日本有数の実績を誇る。

 全国的に麻酔科医の不足が顕在化する中、ペインクリニック専門医が常勤しているのは強みだ。岩木医長は「痛みを取ることで患者のQOL(生活の質)向上につなげたい」とする。

 「人材こそが宝」と、看護認定看護師の養成にも力を入れ、がん化学療法、がん性疼痛看護、緩和ケア、皮膚・排泄(はいせつ)ケアの4分野で4人が誕生。今後もさらに増やす方針だ。昨年4月から、彼女たちによる専門外来も週に一度、開設している。

 がん化学療法看護認定看護師の門倉康恵さんは「『この病院に来て良かった』と満足してもらえるよう、とことん寄り添いたい」と意気込む。

 万全の医療体制を目指し、臨床工学技士は同規模施設に比べはるかに多い7人を配置。カテーテルや電気メス、輸液ポンプなど、あらゆる医療機器の点検とメンテナンスを行うほか、手術に立ち会い、トラブルがあればその場で復旧させる。その一人の小川貴康さんは「安全安心な医療の提供を側面から支えたい」と誓う。

 松田院長は「医師は時代に応じたトップレベルの技術習得に努めている。全スタッフが連携し、温かい医療を提供したい」と話す。

◇ 天和会松田病院(086―422―3550)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年06月02日 更新)

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