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(2)女性外来に多い疾患―脂質異常症 岡山ろうさい病院 女性のための総合外来担当医師 田端りか

田端りか医師

 女性外来に限らず、生活習慣病は内科受診の中で最も多い疾患です。生活習慣病は、高血圧、糖尿病、脂質異常症です。このうち女性外来の患者さんに多いのは、脂質異常症です。

 脂質異常症は以前「高脂血症」と呼ばれていましたが、動脈硬化の危険因子は血清脂質(血中のコレステロールや中性脂肪)が高値になるだけではなく、HDLコレステロールが低値となる状態も含まれるため、日本動脈硬化学会が「脂質異常症」と名称を変更しました。

 血清脂質は加齢により変化し、また性差があります。女性では閉経の前後で大きな変化があります。女性の総コレステロールは30歳代から40歳代では男性よりも低値ですが、閉経を機に徐々に上昇し、男性よりも高値となることがわかっています。中性脂肪も女性は閉経後に上昇し、70歳代にはほぼ男性と同程度になります。妊娠中にはコレステロールと中性脂肪が一時的に高値となりますが、分娩(ぶんべん)後には速やかに改善します。

 閉経後は、女性ホルモンであるエストロゲンが低下することにより、LDLコレステロールと中性脂肪が増加し、反対にHDLコレステロールは低下します。エストロゲンは肥満を抑制する作用があり、閉経後は内臓脂肪型の肥満になる頻度が増加します。また、エストロゲンは動脈硬化を抑制する作用があることも知られています。このため、女性は閉経前までは動脈硬化になりにくく、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患の発症率が男性よりも低いのですが、閉経後は動脈硬化が進みやすくなり、心血管疾患の発症率は高値になります。

 脂質異常症はほとんどが無症状で、健康診断や通院中の定期血液検査で発見されます。治療の主たる目的は動脈硬化性疾患の予防です。閉経前女性の場合は、原則として生活習慣の改善が治療の中心となります。閉経後の女性に対しては、食事運動療法での生活習慣の改善による治療効果が不十分な場合は薬物療法も併用します。

◇ 岡山ろうさい病院((電)086―262―0131)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年06月17日 更新)

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