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(7) リウマチ・膠原病 岡山済生会総合病院 山村昌弘特任副院長・リウマチ膠原病センター長 生物学的製剤などで治療大きく進歩

やまむら・まさひろ 広島・修道高、信州大医学部卒。岡山大第3内科に入局後、1989年から米・南カリフォルニア大、91年からカリフォルニア大に留学。93年、岡山大第3内科に戻り、助教授などを務めた。2006年、愛知医科大腎臓・リウマチ膠原病内科教授。11年から岡山済生会総合病院リウマチ・膠原病センター長、今年4月から特任副院長を兼務。日本内科学会指導医、日本リウマチ学会リウマチ指導医、日本老年医学会老年病指導医。59歳。

 ―発症のメカニズムは解明されていますか。

 山村 自己免疫異常が病気を引き起こす原因と考えられています。本来、免疫は体内に侵入してくる細菌やウイルスなどの外敵を駆除し、自分の体の機能を正常に保つ役割を担っています。ところが、膠原病ではこのような免疫を担う細胞が自己の構成成分に対して、外敵に対するように過剰反応し、攻撃をします。その過程で自己に反応する抗体がつくられ、さらに臓器や組織の障害が進行します。免疫異常の原因は十分に解明されていませんが、遺伝や環境などさまざまな要因が複雑に絡んでいるようです。膠原病は女性に多く、女性ホルモンやX染色体の関与が大きいと考えられています。関節リウマチは喫煙、歯周病、肥満などの生活習慣が発症リスクとなります。

 ―どのように診断しますか。

 山村 症状と自己抗体検査などを組み合わせて総合的に診断します。国内の患者数が50万人以上と推定される関節リウマチを例に説明すると、診断には手指や手首など小さな関節の炎症、腫れが重要な所見になります。血液検査では、リウマチ因子に加え、抗CCP抗体が重要です。この二つの検査はそれぞれ70%余りの人が陽性となります。リウマチ因子はリウマチ以外の疾患でも陽性になることがありますが、抗CCP抗体は他の疾患では陽性になりにくく、診断に有用です。

 ―治療のタイミングを教えてください。

 山村 リウマチの早期は治療が良好なこと、早期治療が長期的な関節障害の防止や予後の改善につながることが明らかになっています。しかし、血液検査が陽性であれば直ちに治療を開始するべきだという意味ではありません。膠原病は、臓器の炎症や障害が発症する数年前からそれぞれの疾患に関連する自己抗体が先行して陽性になります。関節リウマチも、リウマチ因子や抗CCP抗体が陽性であっても関節に症状のない時期が数年あると推定されており、この時期から治療を始める意義は不明です。実際、強力な治療も炎症を押さえ込むもので根本的に完治させるものではありません。関節の炎症の始まりが治療開始の適切な時期です。

 ―関節リウマチは根治が困難な難病です。治療法を教えてください。

 山村 基本的な治療薬は免疫抑制剤薬のメトトレキサートです。これが使用できない場合、また効果が十分でない場合は、他の経口抗リウマチ薬や生物学的製剤への変更、追加を選択します。バイオテクノロジーを用いて開発された生物学的製剤は炎症を起こす物質やリンパ球を標的とした薬剤で、現在7種類あります。早期であれば、50%以上の人が寛解と呼ばれる関節症状の消失した状態に到達します。しかし、これらの薬剤で十分に治療できない患者も10%程度います。

 ―注意すべき副作用はありますか。

 山村 重篤な副作用で最も多いのが感染症、特に肺炎です。100人のリウマチ患者を1年間、生物学的製剤で治療した場合、5人前後は入院が必要な感染症にかかると推定されます。治療2年目以降はそのリスクは低下します。メトトレキサートを高齢者に使用する場合、骨髄抑制による白血球や血小板の減少、アレルギーによる間質性肺炎にも注意が必要です。

 ―膠原病はほかにどんな病気がありますか。

 山村 関節リウマチの次に患者が多いのは全身性エリテマトーデスで、国内には4万人以上の患者がいます。関節リウマチに比べ、若年の女性に発症します。ステロイドの導入で、予後が改善されていますが、長期にわたる腎炎、神経障害、動脈硬化症などを引き起こします。国内でも免疫抑制剤薬の使用が可能になり、より積極的に治療できるようになりましたが、保険適用外のものもあります。近年は、顕微鏡的多発血管炎という疾患が高齢者に増えています。腎臓機能が低下し生命を脅かす疾患です。この疾患には生物学的製剤のリツキシマブが効果的なことが2010年に証明され、当院でも積極的に治療に取り組んでいます。

 ―どんなことを支えに難病治療に向き合っていますか。

 山村 30年余り前に膠原病治療を始めたときは、ステロイドと限られた種類の免疫抑制剤薬と抗リウマチ薬しか利用できず、満足な治療効果が得られることは多くはありませんでした。その後、ここ10年ほどで治療効果の高い生物学的製剤や免疫抑制剤薬が登場し、治療は大きく進歩しました。当センターでは現在、600人以上の膠原病患者の診療に当たっていますが、患者から感謝してもらえることが以前より増えたと実感しています。この感謝の言葉を励みにして、最良の治療を提供できるよう努力を重ねていきます。

◇ 岡山済生会総合病院(岡山市北区伊福町1の17の18、(電)086―252―2211)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年07月21日 更新)

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