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睡眠と健康 川崎医療福祉大 医療福祉学部 臨床心理学科 教授 保野孝弘

ほの・たかひろ 福井県立三国高、福井大教育学部卒。関西学院大大学院文学研究科博士課程後期課程心理学専攻修了。2004年から川崎医療福祉大医療福祉学部臨床心理学科教授、07年から同医療福祉学科教授を併任。

 「最近、外に出ることも減り、夕方にちょっと1時間ほど眠ってしまいます。夜寝付けないこともしばしば。途中でいつもよりも目が覚めることも…」。このような状態は、その人の生活習慣や眠りに対する態度などが原因で起こる場合が多くあります。どう対処すればよいでしょうか。

 まず、皆さんの生活習慣を振り返ります。続いて、睡眠と生物時計(体内時計)、高齢者の眠りの特徴について述べます。最後に、快眠を得るための生活習慣のポイントをまとめます。

睡眠生活習慣の振り返り

 表1の項目を見て、あなたはいくつ当てはまりますか? 厳密ではありませんが、該当する項目がゼロから三つなら、かなり睡眠生活習慣が良く、質の良い眠りが取れていると思います。該当項目が、少なくなるようになると良いでしょう。

睡眠と生物時計、高齢者の眠り

 眠りと目覚めは、生物時計とホメオスタシス(恒常性)の相互作用で生まれます。生物時計は睡眠と覚醒の24時間リズムを作り出します。通常、朝になると自然に目が覚めて、夜になると眠くなります。一方、ホメオスタシスは睡眠の過不足を調整する働きです。寝不足の時は昼間に眠くなり、昼寝をしすぎると夜に眠れなくなります。

 「睡眠―覚醒」のリズムは24時間周期を持ち、1日24時間で眠りと目覚めを繰り返します。しかし生物時計の周期は、生まれつき1日約25時間と言われています。私たちは生物時計の周期と、1日24時間の社会生活リズムとの1時間のズレを毎朝調整します。ズレを修正するには、光(太陽、日光)が最も大切です。また近年、規則正しい食事、特に朝食もその一つと考えられています。

 生物時計がリセットされると、体のリズムが新しくスタートします。その際、メラトニンというホルモンの分泌がいったん止まります。メラトニンは睡眠物質の一つと考えられ、睡眠に導く働きをします。朝の日光で、この分泌のリズムが新しく開始され、それより約14〜15時間後の夜間に分泌が最も多くなるようなリズムを持ちます。昼間は分泌が抑えられ、夜間暗くなると分泌量が増えるわけです。しかし夜間の照明や、スマホやコンピューターなどの光は、メラトニンの分泌を抑えます。その結果、なかなか眠れないなどの不眠症状が生じることがあります。

 高齢者の睡眠の特徴の一つとして、1日に1回目覚めて1回眠るリズムが、昼間にも数回眠るというリズムに変化することが挙げられます。また一般的に、高齢になると寝込むまでに時間がかかるようになり、途中で目覚める(中途覚醒)が増え、深い睡眠が少なくなります。また、メラトニンの分泌が大きく減ります。これらの原因は、老化によると考えられます。

生活習慣の見直しのポイントと快眠

 最後に、快眠を得るためのポイントをまとめました=表2参照。特に大切なのは、朝起きたら朝日を浴びる、明るい所に出ることです。また、昼間は軽い運動や趣味を楽しむなど、頭や体を使うことです。昼に1時間以上の昼寝は避ける方がよいでしょう。さらに、眠る努力をしすぎないことです。むしろ「眠れなくても大丈夫」と思うぐらいがよいでしょう。

 普段の生活習慣を見直すと、快眠を得られる場合があります。まずは睡眠の生活習慣を少し変えてみて、その変化を調べてください。皆さまが、眠り上手になることを祈っております。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年08月04日 更新)

タグ: 健康

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