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(4)貧血 岡山ろうさい病院 女性のための総合外来担当医師 田端りか

田端りか医師

 今回は貧血についてです。

 女性に多くみられる血液疾患の代表は鉄欠乏性貧血で、わが国の全貧血の70%近くを占め、成人女性のおよそ10%、成人男性では数%にみられます。その他にも、貧血にはビタミンB12や葉酸の欠乏による悪性貧血、骨髄での造血機能低下による再生不良性貧血、腎不全による腎性貧血、悪性腫瘍による貧血などがあります。ここでは、女性外来で最も多い鉄欠乏性貧血について説明します。

 鉄欠乏性貧血の原因は3種類あります。一つは偏食やダイエットによる鉄の摂取不足や胃小腸切除による鉄の吸収障害によるいわゆる鉄の供給不足です。二つ目は成長期の筋肉形成や妊娠時における胎児への鉄の供給などの鉄の需要増加です。もう一つは子宮筋腫や子宮内膜症などの月経過多を伴う婦人科疾患、または胃十二指腸潰瘍、胃・大腸がん、痔疾(じしつ)などの消化管出血などによる鉄の喪失です。

 貧血に特異的な症状はありませんが、動悸(どうき)、息切れ、めまい、全身倦怠(けんたい)感などが一般的です。慢性化していると体が慣れてしまい、貧血が進行しないと症状が出ないことがあります。重症になると匙状爪(さじじょうづめ)、口角炎、舌炎、味覚障害などを伴うことがあります。

 血液検査で貧血、血清鉄とフェリチンの低下を認めます。原因となっている疾患の精査も必要です。食事内容などの生活習慣や消化管の手術などの既往の確認をし、出血を疑った場合は婦人科疾患の有無を精査するために婦人科受診を、消化管出血に関しては胃や大腸の内視鏡検査などを勧めます。

 原因疾患の治療はもちろんですが、治療は鉄剤の投与になります。内服による鉄剤投与が原則ですが、吐き気などの消化器症状が副作用として出る場合は鉄剤の注射もあります。貧血が改善しても、貯蔵鉄が十分に増加するまでは鉄剤の投与は必要で、また、鉄剤投与を中止した場合も、月経過多が原因の場合では婦人科疾患の根本的治療をしなければ定期的に貧血の検査は必要となります。

◇ 岡山ろうさい病院((電)086―262―0131)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年08月04日 更新)

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