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(3)不整脈とカテーテルアブレーション 岡山ハートクリニック医師 東矢俊一

 ひがしや・しゅんいち 香川県大手前高、自治医科大卒。香川県立中央病院など同県内の医療機関を経て2012年から現職。2年間で行ったアブレーション治療は約200件。ペースメーカー治療、冠動脈ステント治療も行う。日本内科学会認定医、日本循環器学会専門医、日本プライマリーケア学会認定医。

カテーテルアブレーション治療の様子

“治療すべき不整脈”と“放置してもよい不整脈”

 初めて不整脈に気づかれるのは、動悸(どうき)がしたり、脈をとってみると異常に遅かったり、逆に速すぎたり、不規則になったりしている時が多いのではないかと思います。また、自分では全く気がつかないのに、心電図をとると「不整脈が出ています」と言われて、わかる場合もあると思います。不整脈があると言われると、どうしても心配になると思いますが、医療機関で適切な検査を受け“治療すべき不整脈”と“放置してもよい不整脈”を見極めてもらってください。

不整脈は薬で治りますか?

 今回は不整脈のカテーテルアブレーション治療について説明いたしますが、不整脈の治療全般に関しても簡単に触れておきます。治療の対象となるのは、検査の結果、治療すべき不整脈と判断された場合になります。

 以前は、不整脈はお薬で経過を診ることがほとんどでした。ただし薬では根本的な解決にはならず、不整脈を“抑えている”に過ぎません。例えば、血圧の薬を飲んでいて治った! という人を見たことがありますか? 不整脈の場合も基本的な考え方としては同じで、薬ではほぼ終生の長い付き合いとなります。

 しかし最近では医学の進歩に伴い、不整脈にも“抑える”のではなく“治す”道が拓(ひら)かれました。

カテーテルアブレーションとは?

 不整脈を根本的に治す方法にアブレーションという治療法があります。もともとアブレーション(ablation)とは「取り除くこと」「切除すること」という意味ですが、不整脈の原因を見つけてカテーテルで焼く治療のことを言います。焼く治療といっても、50度から60度程度までの高周波で焼くだけですので心臓の中が真っ黒焦げ、なんてことはありません。

 ヒトの心臓は非常に精密な電気回路のようなもので構成されています。脈拍の元となる電気信号を作るところ、その電気信号を心臓の隅々に伝える電線、伝えられた電気信号を筋肉の興奮に換えて血液を送り出すところ―などです。不整脈の原因は人によってさまざまです。高血圧や糖尿病、心不全等の基礎疾患、加齢やストレス、または心筋梗塞などにより引き起こされた心臓内の傷が不整脈の原因となることもあります。もちろん病気などしたことの無い健康な方でも心臓の中に余分な電気回路が存在し、不整脈の原因となることがあります。

アブレーション治療の実際 (治療する不整脈により変わる)

 治療にあたっては、適応や現在の全身状態について、各種検査を入念に行った上で総合的に判断します。先ほど説明した通り、もともとの持病がある方もおられますので、そちらの治療を優先して行い、落ち着いた後にアブレーションを行うこともあります。

 アブレーション治療の入院期間はおおよそ2~7日となっております。カテーテルという先端が細い管を血管に通して入れることにより治療を行いますので、大きい傷が生じることも無く、治療後翌日には歩行可能となります。また当院ではほとんどが麻酔を使用して寝ている状態で行いますので、痛みや意識が無い状態で治療が終了します。前述の通り、不整脈が治れば早期に薬が不要になります。退院後より通常通りの生活を送っていただくことが可能です。

 もちろんアブレーションは手術になりますので危険性も伴う治療になります。一般的には出血や脳梗塞、心タンポナーデ(心臓から出血して血圧低下が見られる)などがあります。いずれも頻度は少ないものですが、起こった場合には生命に関わってくる場合がありますので、治療前に十分に説明を受けてください。

 アブレーション治療は日々進歩しています。お困りの際にはぜひご相談ください。

◇ 岡山ハートクリニック(岡山市中区竹田54の1、(電)086―271―8101)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年08月18日 更新)

タグ: 心臓・血管

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