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食物アレルギーとともに 学校給食(3)教師は 校内挙げて情報を共有

赤磐市内の小学校の職員室に設置されたホワイトボード。その日のアレルギー対応が一目で分かる

 5月末の赤磐市内の小学校の職員室。ホワイトボードに、その日の給食で食物アレルギーのある児童4人の対応が記されていた。児童の学年とクラス、氏名の頭文字を示すアルファベット、その横には「対応なし」「持って来る」「除去食」の表現。対応を教職員全員が認識できるようにするための工夫だ。

 「担任の先生だって出張もあれば病気で休むこともある。学校で働く全員が情報を共有し、備えることが大事なんです」。考案した女性養護教諭が説明する。

 乳製品と卵のアレルギーがある男子児童はこの日、パンの代わりに、乳製品を含まないパンを持参した。登校後すぐ職員室へ預け、給食時間に受け取る。

 食べられない食品の代替品を持参する場合は、複数の子が重なると取り違えが起こる恐れがある。学校では、児童にそれぞれ名前入りの容器で持ってきてもらい、預かる時も手渡す時も教職員が本人を確認し、受け取り票にサイン。念入りにチェックを繰り返す。

 「職員一人一人が当事者意識を持つ。学校を挙げての取り組みは、そういうことだと思う」と校長は強調する。

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 食物アレルギーは、原因物質も症状も、一人一人違うため、該当の子どもがいる学校では、独自にマニュアルやルールを作る。

 この学校は2年半前、食物アレルギーのある児童の入学をきっかけにマニュアルを作った。誤食の予防、持参食の管理、事故が起きた時の緊急対応…。マニュアルは養護教諭らが中心になり、他校の取り組みを参考にし改善を重ねた。

 それだけに、一昨年12月、東京・調布市の給食誤食による死亡事故はショックだった。

 同市の検証委が作成した報告書は、発生の要因として除去食の提供方法と、症状を緩和する自己注射薬・エピペンの不使用などを挙げ、校内での不十分な情報共有や職員間の連携不足を指摘した。

 事故から1カ月後、赤磐市のこの小学校でも約40人の教職員全員が参加して研修を開いた。養護教諭が食物アレルギーについて仕組みや危険性を説明し、自校の現状を報告。意見を出し合い、練習キットを使ったエピペンの使用訓練も行った。

 「マニュアルをきちんと守り複数の目で確認することを再確認した。事故防止に近道はない」と養護教諭。人事異動で教職員が入れ替わっても同じ対応ができるよう、年に1度の校内研修を続けている。

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 「緊張の連続」。担任教諭が給食時間の様子を打ち明けた。給食入りのコンテナが教室に届くと、まず最初に除去食の容器を取り出し自分の机に移す。巡回してきた養護教諭も容器の中身を確認し、クラス全員の配膳を終えた後で、アレルギーのある児童に手渡す。

 事故を防ぐには教職員だけでなく、クラスの他の児童の理解と協力も大切という。教室には、アレルギー対応の日に印を付けた献立表を掲示し、子どもたちも情報を共有する。4月は食物アレルギーについて説明し、みんなで気をつけるよう話し合った。

 給食時間は本来、友達同士で机をくっつけて向かい合い、楽しそうに食べる学校が多いが、「そうやって食べるようになったのは5月の連休明けから。最初は何かあってもすぐ分かるよう、勉強の時と同じように、全員に前を向いて静かに食べてもらった」。

 担任はアレルギーのある子どもの給食対応を振り返り、こう話す。「毎日気が抜けませんが、学校はみんなが安全に過ごせる場所でなくてはならない。子どもの命を預かる仕事の重大さを身に染みて感じます」

 東京・調布市の給食誤食事故 東京都調布市の公立小学校で2012年12月、乳製品にアレルギーのある5年女児が給食で、粉チーズ入りのチヂミを「お代わり」で誤って食べ、重篤なアレルギー症状の「アナフィラキシーショック」で死亡した。女児は普段からアレルゲンの除去食が提供されていたが教職員の情報共有が十分でなく、万一に備えた自己注射薬・エピペンもすぐに打つことができず対応が遅れた。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年08月26日 更新)

タグ: アレルギー

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