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市民公開講座 肥満と発がん 岡山済生会総合病院

肥満とがんの因果関係などを説明する岡山済生会総合病院の各医師

 岡山済生会総合病院(岡山市北区伊福町)は6日、岡山済生会ライフケアセンター(同国体町)で、「肥満と発がん」をテーマに、市民公開講座を開いた。

 いずれも外科診療部長の高畑隆臣氏、仁熊健文氏、外科医長の河本洋伸氏、内科主任医長の中塔辰明氏が、胃がんや肝がん、大腸がんと肥満の因果関係や予防につながる食生活について分かりやすく話した。座長は外科統括部長の赤在義浩氏が務めた。
 
胃がん 高畑隆臣・外科診療部長 
 
 近年、胃がんの性質と治療に変化が生じている。高タンパク・高脂肪食の摂取量が増えた結果、胃酸分泌量が増え、胃内環境が変化しているためとも言われており、胃がんの最大原因であるピロリ菌とは関係ないタイプが増えつつある。

 胃がんができる場所も変わってきた。胃を上部(胃全体の3分の1)と下部(同3分の2)に分けると、近年は上側が右肩上がりで増えている。

 上側にできる胃がんは、下側にできる場合より早期発見しにくく、再発率も高い。完治を目指すためには全摘せざるを得ない場合が多い。また、肥満体型は、術後に肺の合併症やエコノミークラス症候群が起きやすい。

 肥満予防のためには、食事の際にゆっくりとしたリズムで一口30回程度かむこと。少量で満腹感が得られ、食後の血糖値の急上昇を抑えられる。

肝がん 仁熊健文・外科診療部長

 日本人の肝がんの最大の原因はC型肝炎。一般的に、C型肝炎にかかった人のうち60~80%が慢性肝炎に移行し、肝硬変を経て肝がんを発症する。一方、肥満と肝がんは深い関係にあることが疫学調査によって判明。肥満の人は標準体重以下の人に比べ発症リスクが1・74倍になる。

 肝臓に脂肪がたまる脂肪肝は従来、アルコールが原因と考えられてきたが、肥満や糖尿病に伴う非アルコール性のものが注目されている。これは炎症を伴わないNAFLD(ナッフルド)から始まり、一部は肝硬変や肝がんに移行するNASH(ナッシュ)に進行する。

 当院が近年治療した肝がんのうち、C型肝炎に起因するのは68%、B型肝炎は10%ほど。いずれも治療の進歩で減少傾向にある。一方、NASHのようなB型やC型のウイルス性ではないものは約20%だが、近年は増えつつある。

大腸がん 河本洋伸・外科医長 

 大腸がんは50代から罹(り)患率が高くなり、男性に多い。潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患、大腸ポリープの既往がある人、血縁者に大腸がんがいる人は発症リスクが高くなる。

 肥満度の目安であるBMIが上がるほどリスクは高まり、これが30を超えると、標準(23~25)より、男性は1・5倍、女性は1・3倍になる。

 リスクを下げるにはバランスの良い食生活と運動をすること。食事では、食物繊維や牛乳、カルシウムなどが良いとされるが、男性のカルシウムの過剰摂取は前立腺がんのリスクを高める。

 食物繊維は、果物や野菜、豆類よりも穀物由来のものが良いとされている。精白していない全粒穀物は食物繊維を多く含み、これを1日90グラム摂取するとリスクは2割減る。玄米やライ麦パン、オートミールなどだ。

三つのキーワード 中塔辰明・内科主任医長

 がんは糖尿病、肥満と関係が深い。その原因として三つのキーワードがある。まずインスリン抵抗性。血糖を調整するホルモンであるインスリンは、食べ過ぎると作用が過剰になり、細胞増殖のシグナルを活性化し、がん細胞の増殖を促す。

 また、内臓に脂肪がたまると、アディポサイトカイン(脂肪細胞から分泌される生理活性タンパク質の総称)の悪玉物質が増え、インスリン抵抗性が増大し、動脈硬化などを引き起こす。

 さらに、高血糖になると、酸化ストレスのバランスが崩れ、血管を老化させ動脈硬化につながったり、DNAにダメージを与え、がんになったりする。

 健康な生活を送るには、毎日体重を量って運動や食事をコントロールすることや、しっかり休養を取り睡眠時間を確保することが大切。そして、たばこは絶対にやめることだ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年09月15日 更新)

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