文字 

肺がんXAGE抗原が生存に関与 川崎医福大教授らグループ証明

 川崎医療福祉大の中山睿一教授(腫瘍免疫学)と川崎医科大の岡三喜男教授(呼吸器内科学)らの共同研究グループは、肺腺がんに特異的に現れる抗原「XAGE」に対する免疫反応が、完治が難しい進行がんと診断された後でも機能しており、患者の生存期間に深く関わっていることを5年間にわたる追跡調査で証明した。がんの進行を遅らせるワクチンの開発につながるといい、グループは成果を活用した新たな免疫療法も検討している。

 肺がんの中で最も多いのが気管支の末梢部分に発生する肺腺がん。中山教授らは、肺腺がん細胞の40―50%にXAGEが存在することを約10年前に発見していた。

 一般に、がん細胞は自分の細胞が変化(がん化)したため、抗体が異物と認識できず免疫反応が起こりにくいという。抗原があれば、それが“目印”となって抗体となるリンパ球が活性化し、がんの進行は抑制される。

 グループは2007年以降、川崎医科大付属病院で進行した肺腺がんと診断された患者145人を対象に、XAGEの有無と免疫反応などを観察。診断後の生存期間の中央値を比較したところ、免疫反応があるグループは33・3カ月、ないグループは15・1カ月だった。

 一方、がん細胞の周りには免疫の働きを抑えようとする「制御性T細胞」が多数集まっていることも確認した。「がん細胞排除の障害になっている可能性がある」として、制御性T細胞を取り除く抗体薬を投与する医師主導臨床治験を13年2月から始めている。

 岡教授は「XAGEを使った新型ワクチンの開発を進め、制御性T細胞を除去する治療と併用した複合型免疫療法も実現させたい」と話している。

 成果は25日に横浜市で開催される日本がん学会総会で発表する。米国がん学会の公式学術誌、世界肺がん学会誌にも掲載される。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年09月23日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ