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手足にしびれ 「ロコモ」に注意 岡山大大学院の田中准教授に聞く

「しびれは放置しないで早めに相談を」と語る田中准教授

 骨や関節、筋肉など体を動かす運動器の働きが衰え、暮らしの中の自由度が低下、要介護になる危険の高い状態を指す「ロコモティブシンドローム(通称・ロコモ、運動器症候群)」。高齢化の進展で患者は急増している。中でも神経圧迫によるしびれで日常生活が困難になる事例が多く、専門家は注意を呼び掛ける。8日に「骨と関節の日」を控え、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の田中雅人准教授(整形外科)に予防や治療法について聞いた。

 ―しびれが生じる主な病気は。

 手と足のしびれはロコモの代表的な症状の一つだ。手で最も多いのは「手根管(しゅこんかん)症候群」。手首の手のひら側にあり、骨と靱帯(じんたい)に囲まれた手根管と呼ばれるトンネル内を通る正中(せいちゅう)神経が圧迫されて起こる。仕事やスポーツでの手の使いすぎが主な原因で、親指から薬指にしびれが生じる。進行すると筋肉の動きが悪くなり、ボタンをするといったつまむ動作に支障が出る。さらに進むと、手のひら側にある靱帯を切り離す手術を行わなければならなくなる。

 ―中高年には足腰の痛みやしびれに悩む人は多い。

 歩いていると足のしびれや痛みが強くなって立ち止まり、休むと楽になるという症状は、腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症の疑いがある。背骨下部の腰椎には、脊柱管という小さな管が上下に連なり、脊髄と下半身を結ぶ神経の束が通っている。この管が加齢で狭くなると、内部の神経が圧迫されて足にしびれや痛みが出て、歩行に支障を来すようになる。治療には薬物療法や神経ブロック注射があるが、手術で骨や靭帯などの圧迫部分を削り取ることもある。

 ―有効な予防法は。

 手根管症候群は、15~20分ごとに手や手首を曲げ伸ばしして休息をとる。パソコンのキーボードを打つ際に手首を強く曲げないよう、肘と同じか、少し低く保つことも大切。腰部脊柱管狭窄症は、同じ姿勢を長時間続けず、なるべく腰を伸ばした姿勢を避けるといった工夫で症状を出にくくすることができる。過度に神経質にならず、適度に体を動かすことを忘れないでほしい。

 ―気を付けたいしびれは。

 先に触れた整形外科の領域以外の病気による症状は要注意。手や足のどちらか片方がしびれ、うまく話せない場合は脳梗塞の疑いがあるし、両手足の指先が左右対称にしびれると、糖尿病の悪化で神経細胞の壊死(えし)が起きているかもしれない。体に異変を感じたときは、放置したり自己判断で問題ないと決めつけたりせず、早めにかかりつけ医や専門医に相談してほしい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年10月03日 更新)

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