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(上)倉敷中央病院総合保健管理センター部長 前田亮

まえだ・りょう 広島・修道高、広島大医学部卒。2012年より倉敷中央病院総合保健管理センター部長。医学博士。日本人間ドック学会専門医・指導医、日本臨床検査医学会臨床検査管理医

 「がんは怖い病気。でも自分には関係ない」と思うのは大きな間違いです。今や日本人のうち、2人に1人はがんにかかり、3人に1人はがんが原因で死亡します。

 私たちの体は60兆の細胞からなり、毎日8000億の細胞が死に、同数の新しい細胞が出来ています。新しい細胞が出来る際には細胞分裂が起き、その時にDNAのコピーミスが生じ、遺伝子に傷が出来てがん細胞が生まれます。その数は1日5000と言われています。

 しかし、通常は遺伝子が傷ついても、細胞が自然死したり、免疫細胞により排除されます。従って、遺伝子に傷をつける発がん物質を摂(と)らないこと、年齢とともに起きる免疫力の低下を防ぐことが重要です。

 遺伝子が傷ついて細胞が無制限に増殖する病気が「がん」です。遺伝子の病気なら遺伝が原因(体質)で、生活習慣は関係ないのでしょうか?

 ところが、遺伝で起きるがんは全体の5%に過ぎません。グラフのように日本人の場合、感染症(肝炎ウイルス、パピローマウイルス、ピロリ菌など)が原因となる場合が欧米で言われている5%に比べて多いです。しかし、がんの原因の多くは生活習慣に起因しています。食事に関しては野菜・果物不足、貯蔵肉・塩分過剰摂取はがんの原因となりますが、今後は輸入食材などが問題となり、食物に関しては複雑になると思われます。

 生活習慣の中で、がんの原因として明らかで分かりやすいのがたばこ、酒、肥満、運動不足です。たばこがなくなれば、日本人男性のがんの25%が消えます。体質にもよりますが、酒とたばこが重なると食道がん、咽頭がん、大腸がんの危険性は高まります。

 肥満があるとインスリン抵抗性が生じ、血液のインスリンが高くなります。インスリンはがん細胞の自然死を抑制し、腫瘍細胞の成長を促進します。糖尿病があると同様の機序が働くのと同時に高血糖による酸化ストレスが増加し、がん発症リスクが高まります。運動はインスリン抵抗性を改善し肥満を防止するとともに、免疫力を高めます。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年10月06日 更新)

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