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(9)クローン病の肛門疾患 チクバ外科・胃腸科・肛門科病院 鈴木健夫

鈴木健夫医師

クローン病とは

 主として10代から30代の若い人に発症し、口から肛門に至るすべての消化管に起こりうる慢性的な炎症性疾患です。原因は不明ですが何らかの免疫異常や食事などの環境因子が関係していると言われています。根本的な治療法はなく、炎症を鎮める対症療法が主な治療法となります。

 下痢や腹痛などの消化管症状、肛門痛などの肛門症状、倦怠(けんたい)感、発熱、体重減少などの全身症状が主な症状です。

 肛門病変を高頻度(55―80%)に合併し診断基準の一つにもなっており、消化管症状に先行して発見されることが多いのが特徴です。

クローン病の肛門疾患

■特徴 

 炎症に伴う裂肛(切れ痔)、深い潰瘍の一次性病変と、これに感染を伴った膿瘍(のうよう)、痔瘻(じろう)(穴痔)や肛門狭窄(きょうさく)などの二次性病変があります。典型的には慢性的に痛みを伴い赤く腫れ上がった外観を呈します。

■治療

 一次性病変に対しては一般的なクローン病の内科的治療になります。内服薬、注射薬、食事療法、軟膏になどによる局所処置などです。

 二次性病変に対しては上記の内科的治療に加え外科的治療が必要になります。クローン病の場合、一般的な肛門周囲膿瘍、痔瘻とは異なり根治が困難なケースが多く、シートン法という軟らかいチューブを痔瘻、膿瘍腔に通し長期間留置する治療法が一般的です。内部にたまった膿(うみ)を常時排出し、膿がたまらないようにすることで炎症を抑える方法です。

 これらの治療を行っても、痛みや炎症が改善しない場合や、肛門痛が強く、肛門機能も損なわれて、QOL(生活の質)が保てない場合は、人工肛門(ストーマ)を造設することもあります。また、最近は長期間に及ぶ肛門病変の癌化が報告されていますので十分な経過観察が必要です。

 クローン病は比較的稀(まれ)な疾患で専門的な治療を要します。若年者の繰り返す下痢、腹痛や肛門症状を認める際は、早めの専門医受診をお勧めします。

◇ チクバ外科・胃腸科・肛門科病院((電)086―485―1755)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年10月20日 更新)

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