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(1)分娩予定日 川崎医大川崎病院産婦人科部長 中田雅彦

 なかた・まさひこ 県立山口高、山口大医学部卒。同大で研修後、米国留学で胎児治療について研修。山口大准教授、徳山中央病院周産期母子医療センター長など経て川崎医大産婦人科学教授・川崎医大川崎病院産婦人科部長。日本産科婦人科学会認定専門医、日本周産期新生児医学会周産期専門医、臨床遺伝専門医。

妊娠初期の胎児超音波像

分娩予定日とは

 これから複数回にわたってお産についてお話していきます。第1回は分娩予定日について説明したいと思います。

 通常の妊娠では卵巣から排卵された卵子が子宮内から卵管にたどり着いた精子と出会い「受精」することで妊娠の第一歩が始まります。卵管内の受精卵は約1週間の期間、卵管の中を運ばれ、子宮の中に「着床」することで初めて妊娠が成立します。排卵は月経周期が1カ月程度の規則正しい女性の場合、前の月経が始まって約2週間で起こりますが、着床の頃にはまだ無症状のため妊娠に気づかれることはありません。

 受精卵は、着床する頃からヒト絨毛(じゅうもう)性ゴナドトロピン(hCG)を分泌し始めます。妊娠検査薬ではこのhCGの陽性の有無で妊娠を判定します。受精から2週間程度、次の月経がくるはずの頃になれば妊娠の判定が可能です。

分娩予定日と妊娠週数

 分娩予定日とは妊娠40週0日のことで、おおよそこの時期に分娩になる目安となります。正期産(一般には満期)の時期である妊娠37週0日から41週6日にお産になるのが理想的であり、そのための基準です。

 ところで、妊娠0週1日、つまり第1日はいつかご存じでしょうか。実は受精した日ではなく、月経周期が規則的な場合を想定し、妊娠前の最後の月経が開始した日としています。排卵を予測するのは困難なため、あくまで最後の月経の始まった日を基準としてきた経緯があるからです。

 ところが、最後の月経がいつだったか覚えていない方、月経周期が不規則な方の場合、排卵の時期がずれた方の場合、「いつ排卵したか」の推定は極めて困難です。その場合に役立つのが経腟超音波検査による胎児の大きさ(頭殿長)の測定です。妊娠初期の頭殿長を測定すると、おおむね胎児の受精からの日数が計算できるため、妊娠検査薬で陽性となった女性が受診されても、頭殿長が測定できる時期までは妊娠週数の決定、つまり分娩予定日は決定しないことが多くなります。

 正確な妊娠週数の決定はその後の胎児の発育の評価や流早産の判定になくてはならない基準のため、正確な判定が必要です。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年11月03日 更新)

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