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(1)連載のテーマ 岡山大大学院教授 高柴正悟

 歯周病を、これまでにない視点から解説します。岡山大病院の歯周科で歯周病治療を担っている岡山大教員が、順に連載を担当します。そこでは「歯周病の成り立ちの理解」と「各ライフステージで歯周病に関連する問題」を整理します。一生にわたる身体の健康を支える基本である口「クチ」(口腔=こうくう)の健康を守るという、私たち歯周科の基本姿勢を説明します。

 今後は、ライフステージごとに歯科で配慮する出来事に関して、連載していきます。そのために、次回からの2回は、歯周病という病気の本質とそれが全身へ与える影響を説明します。その後に7回ほど、学童期、青年期、中年期、そして高齢期での出来事と健康への配慮などを説明します。最後には、それらをまとめます。それでは、各ライフステージで歯周病が関連する健康上の出来事を一緒に考えていきましょう。

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 今回は、心身ともに自立した活動的な状態で生存できる期間である「健康寿命」を可能な限り延長していき、命がある期間である「寿命」の終わる「終生」へ向けてソフトランディングしていく歳(とし)のとり方(ソフトランディング・エイジング=SoLA、図1)を提案します。そして、各ライフステージで起こる健康上の出来事を一般的なものと歯科的なものに分けて整理し、歯科で配慮する必要のある出来事とその際の検査(口腔検査)を整理します。

 みなさんのライフステージを考えてみましょう。誕生してから亡くなるまでは、いろいろなステージに分けることができます。いろいろな出来事が身の周りに起こります。また、口腔でもいろいろなことが起こり、歯科での治療を受けるようになります。それらは、図2のように「歯科の病気の本質」を三つの視点で分けた「細菌感染」、「神経系のバランス」、そして「発生系の異常」として見ることができます。各ライフステージではこれらに応じて、歯科の検査を受ける機会にもなります。注目することは、感染(細菌・ウイルス)は全てのステージに共通していることです。

 人間の口腔から腸に至るまでの消化管には、多くの細菌が生後に定着します。入口である口腔と出口である直腸・肛門には、とても多くの細菌が棲(す)みついています。図3のように、幼い時から良い細菌が多いのですが、亡くなる時期(終生期)には減ってきます。代わりに、中間型の細菌や悪い細菌が、終生期が近づくと増えてきます。大きく分けて、こうした三つのタイプの細菌がいます。これは、消化管の入口である口腔においても同じことなのです。

 歯周病になるということは、いつもは少ない種類の細菌が口腔に増えて、歯を支える歯茎(歯肉)や歯の周りの骨(歯槽(しそう)骨)が炎症によって破壊されるのです。そして高齢者では、肺炎に関連したり、口のなかに真菌といわれるカビの仲間を増やしたりするようになります。口の健康を守る意味の一つは、歯周病が関連する細菌感染と炎症を防ぎ、全身への影響を減らすことなのです。

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たかしば・しょうご 福山誠之館高、岡山大歯学部卒。岡山大病院助手、米ニューヨーク州イーストマンデンタルセンター研究員など経て2002年から岡山大大学院教授。日本歯周病学会理事、日本歯科保存学会理事、日本未病システム学会評議員など。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年11月03日 更新)

タグ: 健康岡山大学病院

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