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くも膜下出血を予防するために 倉敷平成病院脳神経外科部長 高尾聡一郎

たかお・そういちろう 岡山高、岡山大医学部卒。岡山赤十字病院など経て2007年、倉敷平成病院脳神経外科医長。13年、社会医療法人全仁会理事長。日本脳神経外科学会専門医。

手術前

手術後

くも膜下出血とは

 くも膜下出血は40~50代の働き盛りに起こることが多く、女性に5倍以上多く起こります。その原因は脳の血管の破れやすいこぶである脳動脈瘤(りゅう)の破裂がほとんどです。脳動脈瘤があっても破裂以前には全く症状がないことがほとんどで、突然の症状出現により発症します。

症状              

 脳動脈瘤が破裂するとさまざまな症状が出現しますが、その中で最もよく知られている症状は頭痛です。動脈瘤破裂により起こる頭痛は「今まで経験したことのないほどの痛み」「バットで頭を思い切り殴られたような痛み」「頭にカミナリが落ちたような痛み」などと表現されるような激しい頭痛となることが多く、その他にも出血の程度により、意識障害、麻痺(まひ)などさまざまな症状を伴うため、出血が起こった場合はほとんどの方が救急車で病院に向かうことになります。

検査              

 病院での検査で最も有効な検査は頭部CTです。くも膜下出血の確認だけでなく、最近ではコンピューターで画像を3次元構成することにより破裂した動脈瘤や責任血管を見つけることができる3D―CT血管撮影も行うことが可能になりました。この検査でくも膜下出血および破裂した脳動脈瘤を発見し、その他の血液検査、レントゲン、血管撮影など、手術に必要な検査を行った後、直ちに緊急手術を行わなくてはいけません。

治療              

 くも膜下出血が起こってしまった場合に最も注意することは再出血です。くも膜下出血の治療では血圧や呼吸状態を慎重に管理し、再出血を予防するために動脈瘤を処置するクリッピング術を行う治療が一般的です。最近では動脈瘤の場所や形状によっては血管内からカテーテルで手術を行う治療も行われるようになってきました。

 手術後はくも膜下出血の再出血は予防されていますが、脳血管れん縮という脳の血管が一時的に細くなる状態が約2週間続きます。脳の血管が細くなると脳梗塞になりやすくなります。脳梗塞により症状が悪化する患者さんもいるため、点滴などの手術以外の積極的な治療をしながらリハビリなどを行っていきます。また頭蓋内の髄液の循環が悪くなり、徐々に髄液が頭の中に溜(た)まって排出されにくくなる水頭症という状態になった場合には、髄液を排出するシャント術が必要となる場合もあります。

くも膜下出血にならないために  

 くも膜下出血は脳動脈瘤という原因がない人にはほとんど起こらないため、脳の血管をチェックし、脳動脈瘤がないことを確認することが大切です。脳ドックなどでも行っている検査のひとつで頭部MRAという、脳の血管を調べる検査が簡単に行えるようになってきました。家族がくも膜下出血になった方は、発生の頻度が約10倍と言われていますので、ぜひチェックしておいた方がよいでしょう。

脳動脈瘤が見つかった場合    

 検査でまだ破裂する前の脳動脈瘤が見つかる場合があります。この場合、破裂しそうか、そうでないかを3DCTなどの精密な検査で検討します。動脈瘤全体で1年のうちに破裂する可能性は1%以下と言われているので、約半年に1度の経過観察を行って、破裂しそうな場合はくも膜下出血が起こる前に手術で予防することもあります。

くも膜下出血にならない生活習慣 

 くも膜下出血が発生する危険因子を調べた縦断調査では危険な生活習慣がはっきりしています。(1)喫煙(2)高血圧(3)飲酒―は有意な危険因子と報告されているので改善していきましょう。

 今まで述べてきたように、くも膜下出血は命に関わることもある大変怖い病気です。しかし、検査や手術技術の進歩によって予防をすることができるようになってきました。まず最初の一歩は脳の検査や脳ドックを受けることから始まります。心配のある方は脳神経外科の受診をお勧めします。

◇ 倉敷平成病院((電)086―427―1111)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年11月17日 更新)

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