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(3)加齢黄斑変性 倉敷成人病センター眼科医長 岡本和夫

おかもと・かずお 玉島高、岡山大医学部卒。岡山大病院、姫路赤十字病院、国立岩国病院など経て2010年4月から現職。医学博士。日本眼科学会専門医、眼科PDT認定医。

 私たちが見た映像が投影され、その情報を脳に送る働きをする組織が網膜です。加齢黄斑変性は網膜の中心部分である黄斑部が障害されるため、見たいと思う部分が見えなくなってくる病気です。日本の中途失明の原因で第4位の疾患です。50歳以上の人では100人に1人にみられると推定されており、近年わが国でも増加傾向にあります。

 加齢(老化)によって生じてきますが、喫煙、遺伝、紫外線なども病気に関与することがわかってきています。症状として、物がゆがんでみえる変視症、見たいところが暗くなる中心暗点、視力低下などを生じてきます。

 加齢黄斑変性には、滲出(しんしゅつ)型と萎縮型があります。日本では滲出型が多く、網膜の後ろにある脈絡膜という部位から異常な血管(脈絡膜新生血管)が生じ、網膜下に成長しながら拡大してきます。脈絡膜新生血管から漏れ出た血液の成分や血管の破たんで生じた出血などで網膜が障害されることで、視機能が低下していきます。脈絡膜新生血管が成熟して線維膜を形成すると、不可逆性の高度な視力低下に陥ります。

 加齢黄斑変性の治療は、視力の維持を目標として光線力学療法(PDT)が行われていましたが、現在の治療の主体は、脈絡膜新生血管の発生・発育に密接に関わっている血管内皮増殖因子(VEGF)を抑える薬剤を注射する方法に変わりました(硝子体内注射)。これにより、網膜の障害が軽度であれば、視力の改善・維持が期待できるようになりました。また最近では、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した網膜色素上皮細胞の移植が話題になりましたが、安全性等の確認を行っている状況です。

 このように治療の研究・発展が進んでいる疾患ではありますが、現時点では高度に障害された網膜の機能を回復させることはできませんので、早期に発見して治療を開始することがとても大切となります。症状を感じた時には放置することなく眼科医に相談してください。

◇ 倉敷成人病センター((電)086―422―2111)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年11月17日 更新)

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