文字 

腎臓構造を幹細胞で再現 岡山大グループ世界初成功

ラットの体性幹細胞から作製した立体的な腎臓組織(岡山大提供)

 

喜多村真治講師

 岡山大などのグループは、ラットの腎臓から取り出した幹細胞を試験管内で培養し、腎臓構造の最小構成単位「ネフロン」のような組織を再現することに世界で初めて成功した、と発表した。培養の際に有効な5種類のタンパク質と、その組み合わせを突き止めた。24日付の米科学誌「ステムセルズ」に掲載された。

 慢性腎臓病の患者数は国内に8人に1人の割合とされ、慢性腎不全の透析患者も年々増加。今回の研究を基に、幹細胞を利用した完全な腎臓構造の再構築が実現すれば、再生医療をはじめ、新しい治療法、医薬品の開発といった幅広い応用が期待できる。

 腎臓は約100万個の「ネフロン」の集合体で、主に血液から不要な物を選別し、尿として体外に排出する役割を持っている。

 岡山大病院腎臓・糖尿病・内分泌内科の喜多村真治講師らのグループは、大人のラットから採取した腎臓幹細胞を使用して、タンパク質などを加えて培養。5種類のタンパク質が有効であることが分かった。開始から3~4週間で糸球体や尿細管などの構造からなるネフロンと同じ構造が50~100個確認できたという。

 完全な腎臓にするにはネフロン同士をつなげる細胞や血管などが必要といい、喜多村講師は「完全な再現に向けた第一歩。培養の際に加えるタンパク質をさらに検討し、今後はヒトの幹細胞を使った研究を進めていきたい」と話している。

 立体的な腎臓組織は、これまで熊本大が人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作ったと報告している。

 ◇

 幹細胞 神経や皮膚、血液など体を形作るさまざまな細胞になる能力と自己複製能力を持つ細胞。病気やけがで失った臓器や組織を修復する再生医療に役立つと期待される。体性幹細胞には神経幹細胞や肝幹細胞などがあり、主に特定の組織や臓器の細胞になるが、多様な細胞に変化するものもある。ほかに、受精卵から作製する胚性幹細胞(ES細胞)、皮膚や血液の細胞に遺伝子を導入するなどして作る人工多能性幹細胞(iPS細胞)がある。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年11月25日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ