文字 

(10)肛門部皮膚疾患 チクバ外科・胃腸科・肛門科病院 木下真一郎

木下真一郎医師

 

 今回は、外来でよく遭遇する肛門部皮膚にみられる良性病変として、肛門掻痒(そうよう)症と尖圭(せんけい)コンジローマについて説明いたします。

肛門掻痒症

 肛門の痒(かゆ)みを訴える疾患の総称である。原因は脱出性直腸疾患の分泌物、糞(ふん)便汚染、真菌症、多汗症、排便後に紙で強く何度も拭くことで、皮膚に損傷を与えることなどであり、また最近はシャワートイレによる過度の温水洗浄により、皮膚の脆弱(ぜいじゃく)化を起こすことが増えてきている。

 症状は、入浴後に体が温まるとき、排便後、紙で拭いたときや、肛門が汗などで蒸れたときなどに痒みが強くなることなどで、睡眠時に無意識に局部を掻(か)きむしってしまうこともある。掻かないように気をつけていなければ慢性化することも多く、皮膚が硬く厚くなり、色素沈着して次第に黒ずんでいく。

 治療は、生活指導(掻くことをできるだけ我慢すること・過度のシャワートイレ使用を避け、排便後に紙で強く拭かないよう気を付けること)や、外用薬(皮膚所見や生検検査にて、ステロイド外用薬や抗真菌剤を使用する)、痒みが強いときには内服薬(抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を内服する)による治療を行う。

尖圭コンジローマ

 性器や肛門のまわりに、径1~3ミリ前後の大きさのイボができ、乳頭状のほか、ニワトリのトサカやカリフラワーのような状態になることもある。

 原因は、HPV(ヒトパピローマウイルス)によるウイルス感染である。HPVにはさまざまな種類があり、尖圭コンジローマを引き起こすタイプのウイルスは主に、セックスやそれに類似する行為により皮膚や粘膜にある小さな傷に侵入して感染する。

 症状は、かゆみや痛みを感じることは少なく、自覚症状はほとんどない。

 治療は、ウイルス軟(なん)膏(こう)を塗布する方法や、電気メス・レーザーによる焼却法、液体窒素による凍結療法などでイボの切除を行う。しかし、ウイルス自体を完全に取り除くことは難しく、3カ月以内に約25%が再発する。

////////////////////

きのした・しんいちろう
川崎医大附属高、川崎医大卒。川崎医大病院、川崎医大川崎病院などを経て2012年から現職。爪外来を担当している。日本外科学会専門医

◇ チクバ外科・胃腸科・肛門科病院((電)086―485―1755)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年12月01日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ