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(4)黄斑円孔・黄斑前膜(上膜) 倉敷成人病センター眼科医長 岡本和夫

黄斑前膜(上膜)と黄斑円孔

岡本和夫医長

 眼球は奥行きが約23mmの球形をしています。その大部分を占めるのが硝子(しょうし)体で、無色透明なゼリー状の構造物です。硝子体は加齢により液化(水分に変化)して、網膜から分離していきます。これを後部硝子体剝離(はくり)と呼びます。

 後部硝子体剝離は生理的な現象で、50から60歳代に多く生じます。この時に硝子体が網膜に影響を及ぼすことで生じるのが、黄斑円孔と黄斑前膜(上膜)です。近年の光干渉断層計(OCT)の登場とその進歩により、硝子体と網膜との関係が画像で明瞭に確認できるようになりました。これにより、黄斑円孔や黄斑前膜(上膜)などの病態が明らかになるとともに、診断や治療が大きく進展しました。

黄斑円孔
 網膜の中心部である黄斑に孔(あな)が開く病気です。近視の人や女性に多い傾向があります。後部硝子体剝離が生じる時に、硝子体と黄斑の網膜との接着が強く、網膜が牽引されることが黄斑円孔の原因です。黄斑円孔では、見ようとするものが歪んだり、つぶれて見えます。例えば人の顔を見た時に、眼や耳や口が鼻の方に寄って、クシャッとなって見えます。

 この状態で長期間経過すると最終的に中心暗点に至ります。したがって、黄斑円孔とわかれば治療が必要となります。治療は、網膜硝子体手術を行い、円孔を閉鎖させます。

黄斑前膜(上膜)

 後部硝子体剝離が生じる時に、硝子体を包んでいる膜(硝子体皮質)の一部が網膜側に残り、それを足場にして網膜面に線維膜を形成してくる病気です。眼内の炎症や網膜裂孔などに続発する場合や後部硝子体剝離が生じる前に硝子体皮質自体が肥厚して膜が生じる場合もあります。

 多くは無症状ですが、膜の収縮で網膜に皺(しわ)や浮腫が生じると、物が歪んで見える変視症や視力低下をきたします。治療は黄斑円孔と同様に硝子体手術を行い、膜を取り除きます。

   ◇   ◇

 両疾患とも失明に至る病気ではありませんが、適切な時期に診断して治療を行うことが、良好な視機能を維持するために必要です。両目を開けた状態では自覚しにくい疾患です。早期発見のポイントは、見え方に違和感を覚えた時に、片目ずつ異常がないかを確認してみることです。

◇ 倉敷成人病センター((電)086―422―2111)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年12月01日 更新)

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