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腎不全抑える遺伝子特定 重井医学研グループ

(左から)正常な腎臓、腎不全を起こさせた腎臓でSfrp1有り、同Sfrp1無し。白い空洞のような構造が大きいほど症状が重く、Sfrp1無しの方が重症なのが分かる

松山誠主任研究員

 重井医学研究所(岡山市南区山田)の松山誠主任研究員(分子遺伝学)らのグループが、腎不全の悪化を抑えるのに重要な役割を果たす遺伝子をマウスの実験で突き止めた。この遺伝子を活用すれば、腎臓病の新たな治療法の開発が期待できるという。

 効果が確認された遺伝子は「Sfrp1」。これまで腎臓に存在し、脊髄形成に関与することが知られており、腎臓がんなどの細胞の特異性を捉えて効率よく作用する「がん標的薬」になり得るとして脚光を浴びている。ただ、具体的な役割は明らかになっていなかった。

 松山主任研究員らは、大人のマウスで二つの腎臓にそれぞれつながる尿管の片方をひもで縛り、人為的に腎不全を発症させると、Sfrp1が正常なマウスの2倍以上に増加したことを確認。また、人為的にSfrp1を欠損させたマウスを同様に腎不全の状態にした場合は、不要な成分をろ過する管が破壊されるなど症状が悪化した。この結果から、腎不全になるとSfrp1が作られ、悪化を抑える作用に関与していると結論付けた。

 日本透析医学会によると、2013年12月現在、国内の透析患者は約31万人、岡山県内は約4700人に上る。松山主任研究員は「ヒトにも同じ遺伝子は存在する。Sfrp1を増加させる治療薬を開発できれば、透析患者や透析回数を減らせる可能性がある」と話している。

 この研究は、米科学誌「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー」に掲載された。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年12月04日 更新)

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