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小児心筋再生医療で治験開始へ 岡山大病院、保険適用へ加速

王英正教授

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)新医療研究開発センターの王英正教授らのグループは、生まれつき重い心疾患を持つ小児の心臓幹細胞を培養し、心筋に戻して機能を強化する「再生医療」の臨床研究に取り組んでいる。来年からは、国内の医療系ベンチャー企業と連携し、標準治療と認められるための保険適用に向けた全国初の臨床治験を計画している。

 対象は左心室が小さく、血液を送り出すポンプ機能が弱い「左心低形成症候群」の患者。血流を改善させる外科手術時に採取した心臓組織から、自己複製能力のある幹細胞を抽出して10日間培養し、カテーテルで心臓へ戻す。岡山大病院はこの再生医療を2011年に世界で初めて成功させている。

 重度の先天性疾患の場合、最終的には心臓移植しか治療法がない場合が少なくないが、国内では小児のドナー(臓器提供者)はほとんど現れないのが実情。

 グループは11年1月~12年1月、3歳以下の7人に対し、安全性を調べる臨床研究を実施。全員ポンプ機能が向上し、不整脈や細胞のがん化などの副作用は確認されなかった。2年間の追跡調査でも、向上したポンプ機能は維持され体の発育も順調だった。

 治験は、岡山大病院を含む国内の6医療施設で40人に行う予定。心臓組織の採取はこれまで外科手術時に限っていたが、手術することなくカテーテル検査でも行うほか、幹細胞の移植回数も成長に応じて複数回行うことを検討する。

 王教授は「臨床研究でエビデンス(効果の証拠)が得られた。早期の保険適用を目指すとともに対象疾患も拡大させたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年12月17日 更新)

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