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認知症ケアに「回想法」活用 瀬戸内市立図書館、高齢施設巡回 

昔の生活用具を使った「回想法」で会話を弾ませる高齢者=昨年12月、瀬戸内市内

 瀬戸内市立図書館(同市邑久町尾張)は昨秋から、高齢者施設に本を届ける移動図書館サービスに合わせて、昔の生活用具などを使って記憶を引き出す心理療法「回想法」をお年寄りを対象に実施。ユニークな試みとして注目を集めている。

 「何に使う物?」。担当職員が古い道具を示して問い掛けると、部屋に集まった10人ほどの高齢者が次々に話しだす。「おひつとおひつ入れじゃ」「ご飯が冷めん」…。「母を思い出す。懐かしい」と言う女性も。

 昨年12月中旬、同市内の小規模デイサービス施設。施設管理者の井手志津香さん(27)は「お年寄りが同じ話で盛り上がれる。耳が遠い人もおり、視覚に訴える点もいい」と感心した様子だ。

 回想法は記憶を呼び覚まして脳を活性化させる療法。1960年代に米国で始まり、認知症の予防や進行の抑制に効果があるとされる。

 同市立図書館は昨年10月、移動図書館サービスを高齢者施設向けに開始。回想法は、県外の図書館で実践しており、新しい市立図書館(2016年度開館予定)で展示予定の民俗資料を活用できることから取り入れた。

 同サービスで毎月訪ねる15施設のうち希望した9施設を対象に11月上旬から始め、各施設を一巡。学芸員資格を持つ市教委社会教育課の村上岳さんが担当し、大正から戦後しばらくまで使われた羽釜や弁当箱など4種類の道具を使って1回約15分、10~20人の高齢者と向き合ってきた。

 「道具を見せた途端に会話が弾む期待通りの反応」と村上さん。

 同市立図書館は回想法を通じ、古い生活用具の呼び名や使い方を高齢者から学ぶことができると期待。担当するボランティア養成も目指しており、「高齢者のケアとともに地域文化の継承にも役立てたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年01月13日 更新)

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