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(3)痛みがある時に運動していいの? 笠岡第一病院理学療法士 中道博

なかみち・ひろし 長崎県立長崎北陽台高、川崎医療福祉大リハビリテーション科卒。2010年から笠岡第一病院に勤務。日本理学療法士協会員。ペインリハビリテーション学会員。

 痛みがある時に運動をしていいの? 運動すると痛みが強くなるのでは? そのような疑問を持たれている方は多いかと思います。そこで、今回は痛みと運動との関係についてお話します。

 従来は「痛い時は安静にすべき」と信じられてきましたが、現在は骨折や感染など一部例外を除き、まったく動かさないというのではなく「痛くても普段通りの活動を」続けた方が回復は早いとされています。

 痛い時に安静にしておくと痛みが軽減するのでしょうか。安静によって関節が固まり、筋肉が衰え、姿勢が崩れてきます。そのような体で無理に動かそうとすると、痛みが増すだけでなく、正常な筋肉や関節にも負荷がかかり、新たな痛みを生じます。そうすると、痛みを避けようとして活動量が低下し、さらに動けなくなります。その結果、身の回りの事さえできなくなり、悪循環から抜け出せなくなります。このような悪循環に陥らないためにも、痛くても適度に体を動かすという事はとても大切な事です。

 しかし、適度に体を動かしましょうといわれても、どのように動かせば良いのかわからないですよね。実際に、自分自身で運動メニューを考え、続けようとしても、運動中や運動をした後に痛みが強くなると、すぐに運動をやめてしまう方がたくさんおられます。このように失敗を繰り返すと、運動する自信が無くなり、諦めてしまう方も多いのではないでしょうか。

 そこで、悪循環を断ち切る治療法として、理学療法士が関節や筋肉などの身体能力、生活活動パターンを専門的に評価し、それぞれの身体に見合った運動を提供する「運動療法」が非常に効果的です。

 痛くなるのが怖くて、自分だけで運動を始めるのが心配という方は、理学療法士と一緒に運動療法に取り組むことをおすすめします。痛みが強い場合にもマッサージやストレッチなどを併せながら、痛みに応じて安心してできる運動を考えていきます。まずは「体を動かしても大丈夫」という実感をもっていただき、段階的にストレッチや筋力トレーニング、自転車こぎやウオーキングなどの全身運動、さらに自宅での自主訓練を行うというような、適切な運動メニューを作成していきます。そして最終的には自分の体に見合った運動習慣をつけていただき、心身の健康を回復・維持することが目標です。

 運動を行う際には、自身の身体能力に見合った運動量を見つけることも大切です。運動量が多すぎても(過活動)、少なすぎても(不活動)痛みは悪化します。当院ではその方の体に適切な運動量を見つけるために自主訓練表や歩数計、三次元加速度計、痛み日記()などの道具を用い、毎日の歩数や運動量、活動量と痛みの関係を一緒に検討していきます。

 その中で「動いているときは、痛みを忘れていた」「自分で動かしても大丈夫だった」「これくらい動いても痛みは増えなかった」など、痛みと運動について、たくさんの気付きを得ることができ、適度な運動量がどれくらいなのか再検討することも大切な事です。

 今回紹介した運動療法はやっかいな痛みに対する多面的なアプローチにおいて、中心的な役割を担っています。ご自身の体に合った運動や生活を一緒に考えてみませんか。

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 笠岡第一病院((電)0865-67-0211)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年01月19日 更新)

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