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睡眠時無呼吸症候群について 倉敷平成病院呼吸器科部長 堀内武志

ほりうち・たけし 岡山一宮高、自治医科大卒。岡山県職員として岡山赤十字病院、大原町国保病院などに勤務。赤磐医師会病院、岡山赤十字病院など経て2014年9月から現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡指導医など。

 人生の3分の1は睡眠だといいます。睡眠には「心身を休め、ストレスを取り、再生・修復させる」という重要な働きがあります。この睡眠がうまくいかないことを睡眠障害といいます。睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に繰り返し呼吸が止まるために、深く十分な眠りが得られなくなります。その結果、日中の強い眠気や自律神経系の異常等が生じてくる睡眠関連呼吸障害という睡眠障害です。

 睡眠時無呼吸症候群は、「運転中などに居眠りして重大な事故を起こすことがある病気」として有名です。他の症状には「寝ている時にしばしば息が止まる(無呼吸)」「日中、眠くてしかたない」「いびきが激しい」などがあります。合併症も多く、眠気による集中力・記憶力の低下や日常生活の支障、起床時の頭痛、脳血管障害、狭心症や心筋梗塞などの心血管障害、不整脈、高血圧、高脂血症、糖尿病、インポテンツなどがあり、突然死の原因にもなる要注意の病気です。

 睡眠時無呼吸症候群の診断には、睡眠中の呼吸等を検査する必要があります。簡易型の検査もありますが、終夜睡眠ポリグラフィー(ポリソムノグラフィー=PSG)が勧められます。脳波、呼吸、動脈血酸素飽和度、いびきの有無、心電図、四肢・眼球の運動、胸腹部の動きなどさまざまな検査を睡眠中に同時に行うことができ、他の睡眠障害なども含めて詳細な睡眠中の状態を知ることができます。

 睡眠時無呼吸症候群の場合は、深い睡眠の消失、繰り返す無呼吸(連続10秒以上の呼吸停止)や低呼吸による動脈血酸素飽和度の低下(低酸素血症)、睡眠の中断、いびきの頻発などが認められます。睡眠中に、無呼吸が1時間に5回以上(または7時間に30回以上)出現し、それによると考えられる日中の眠気等の症状があった場合に睡眠時無呼吸症候群と診断します。無呼吸や低酸素血症が多くみられても自覚症状が乏しい人もおられます。

 睡眠時無呼吸症候群は「閉塞型」「中枢型」「(閉塞型と中枢型の)混合型」に分類されます。「閉塞型」は上気道の閉塞によるもので、原因として肥満が有名ですが、肥満ではない場合も多いです。「中枢型」は脳神経疾患の方に多く、睡眠中の呼吸中枢からの指令異常が原因です。

 睡眠時無呼吸症候群と診断された場合は、肥満がある人は減量します。飲酒や生活習慣に問題がある人は、それを改善します。運動が有効なこともあります。そして重症度に応じて治療法を選択します。重症度はAHI(無呼吸低呼吸指数)を用います。15未満が軽症、15以上30未満が中等症、30以上が重症です。中等症までなら、口腔内装具(スリープスプリント)や内服薬(アセタゾラミド、三環系抗うつ剤)が選択肢になります。中等症以上では経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)が行われます。CPAPは、睡眠中に鼻マスクから空気を送り込むことで、上気道の閉塞を防ぐ治療法です。時に手術療法(UPPP=口蓋垂・口蓋・咽頭形成術)も行われます。

 健康に過ごしていくために睡眠はとても大切です。「睡眠の心がけ12カ条」も参考に、朝起きた時に疲れが残らないような生活を心がけてみて下さい。

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 倉敷平成病院((電)086―427―1111)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年01月19日 更新)

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