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(4)学童期に見られる歯周病 岡山大学病院歯周科助教 伊東孝

いとう・たかし 奈良県・奈良学園高、岡山大歯学部卒。同大学院医歯薬学総合研究科修了。岡山大病院医員を経て、2013年から現職。大阪府出身。

 歯周病と聞くと、中年期以降の病気というイメージがあるのではないでしょうか。若い世代、特に学童期では、あまり重視されない病気かもしれません。しかし、そこに大きな落とし穴があります。

 学童期の口腔(こうくう)内では、子どもの歯である「乳歯」から大人の歯である「永久歯」へと生えかわる「歯の世代交代」がおきます。生後6カ月ごろから生え始める乳歯は、授乳から離乳食、そして固形食へと食事摂取の仕方を習得していく上でとても大切な歯です。また、発音や会話といったコミュニケーション能力を成長させる上でも、とても重要な働きをしています。6歳を迎えるころから、乳歯に別れを告げ、永久歯へと生え替わり始めます。永久歯への生え替わりの時期は、ちょうど身体の成長の時期に一致しています。永久歯は顎骨の発達に影響を与え、28本の永久歯がすべて生えそろうころには第一次成長期がちょうど終わりを迎えます。このように、歯は身体の成長と大きく関係しています。

 乳歯と永久歯が混在している時期は、歯並びがとてもデコボコしており、一生のうちでも歯を磨くのが特に難しい時期にあたります。当然、むし歯や歯肉炎のリスクも高くなりますが、この時期こそブラッシングや間食などの生活習慣の基礎が出来上がると言っても過言ではありません。また、学童期にみられる口腔内の問題として、口呼吸(こうこきゅう)の影響があります。口呼吸は鼻呼吸に比べ、口の中が乾燥しやすく、細菌が繁殖しやすい環境をつくります。むし歯や歯周病は口腔内に常在する細菌が原因で発症する感染症ですので、当然これらの病気になるリスクは上がります。さらに、口臭、歯並び、そして呼吸器系など全身の健康にも影響します。

 口呼吸をしているかどうかを見る方法として、上顎前歯において、表側の歯面の乾燥と着色の有無、そして歯の裏側の歯肉状態を観察します。乾いて着色していたり、歯肉が赤く腫れて波状になったり(堤状(ていじょう)隆起=写真)します。学童期に、このような状態が観察されたら口で呼吸している可能性が非常に高いので、早めの適切な対応が必要です。

 一生の口腔状態を決めることになる学童期の口腔管理は、非常に重要です。学校歯科検診で問題点を指摘される前に、定期的に歯科医院を受診して、適切な予防処置を受けることが大切です。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年01月19日 更新)

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