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(5)青年期に見られる歯周病 岡山大大学院医歯薬学総合研究科歯周病態学分野 助教 下江正幸

下江正幸助教

青年期に見られる歯周病―侵襲性歯周炎―

 「歯周病」と言えば、50~60歳頃から発症する病気というイメージをお持ちではないでしょうか。その症状として、歯磨き時に歯肉から出血したり、歯がグラグラして噛(か)みにくくなったりすることはご存知だと思います。このように中高年期に発症する一般的な歯周病を『慢性歯周炎』といいます。40歳以上の日本人の約8割が罹患(りかん)していると報告されている「歯周病」は、この『慢性歯周炎』です。しかしながら、通常は中高年に発症する歯周病が、若い時期(思春期や青年期)に発症することがまれにあります。この若年期に発症する歯周病を『侵襲性(しんしゅうせい)歯周炎』といいます(写真)。その名前の通り、一般的な歯周病(慢性歯周炎)に比べて、急激に歯を支えるあごの骨(歯槽骨)を破壊して、若くして歯を失ってしまう病気です。

 侵襲性歯周炎の特徴は、(1)全身的には健康である(血液検査などでは問題がない。口の中にだけ症状がある)、(2)急激に歯槽骨が破壊される、そして、(3)家族性に発症する(同一家系内に発症する者がいる)―の3点があります。そのため、侵襲性歯周炎は、遺伝的な病気であるといわれていますが、いまだにその原因は不明なままです。

 このように若くして歯を失ってしまう侵襲性歯周炎という病気は、とてもこわい病気のように見えます。しかし,たとえ侵襲性歯周炎になったとしても、専門的な歯周病治療を受ければ、その進行を止めることが可能です。大事なことは、なるべく早期に口の異常(歯肉の腫れや出血、歯の動揺など)に気付くことです。歯を支える歯槽骨が大きく破壊されてからでは遅いのです。そのためにも、毎日の歯磨きの時に口の中の状況を意識することと、定期的に歯科医院で健診を受けることが大切です(毎日の便への注意と、毎年の健診と同じですね)。

 侵襲性歯周炎に対応が遅れた場合、ライフステージの早期に多くの歯を失いかねません。若くして多くの歯を失ってしまうと、口の健康が損なわれるだけではなく、その後の人生で健康状態や健康維持にかかる時間・費用が変化し、日常生活に大きな悪影響が出てしまいます。人生を楽しむためにも、若い時から口の健康を意識するとともに、周囲の人たち(家族など)が子どもや青年の口に対する意識付けをすることが重要です。

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 しもえ・まさゆき 福山市出身。広島県立福山明王台高、福岡歯科大卒。岡山大大学院医歯薬学総合研究科(博士課程)修了。岡山大病院歯周科・外来医長、日本歯周病学会認定歯周病専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年02月02日 更新)

タグ: 岡山大学病院

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