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「心臓と血管をより若く」テーマに講演 岡山赤十字病院・佐藤哲也循環器内科部長

佐藤哲也循環器内科部長

日常生活の注意点説明


 岡山赤十字病院(岡山市北区青江)循環器センターの「市民公開・心臓病講座」が1月31日、山陽新聞社さん太ホール(同柳町)で開かれた。佐藤哲也・循環器内科部長が「心臓と血管をより若く」のテーマで講演し、心筋梗塞などにならないための日常生活の注意点などを分かりやすく説明した。その講演要旨を紹介する。

 日本において、心疾患や脳血管疾患、大動脈疾患などいわゆる動脈硬化症に起因する死因をまとめると約4割に達し最も多い。これらのリスクを軽くし、若々しく健康に年を取るための五つのポイントを紹介する。

(1)動脈硬化の元を絶つ

 高血圧、肥満、脂質異常、糖尿病の四つは“死の四重奏”“サイレントキラー”などと言われ、やっかいなことに顕著な症状が出ずにひそかに動脈硬化が進む。中でも、日本人で最も動脈硬化を引き起こすリスクが高いのは高血圧だ。

 年齢などによっても異なるが、上は140、下は90以下になるよう心掛けてほしい。

 九州大が福岡県久山町の住民を対象に続けている疫学調査では、血圧が180を超えている人の脳卒中発症率は120を下回る人の8倍以上であることが報告され、高血圧と脳卒中の深い因果関係が証明されている。

(2)薬を正しく飲む

 外来で患者さんに接していると、薬を飲み忘れる人が非常に多い。飲み忘れないためには、薬を服用時間に分類できる市販の薬保管ケースや、曜日のところに袋が付いた薬カレンダーなどを活用すればよい。薬局に頼めば、異なる薬を服用分ごとに1袋に包む分包にもしてもらえる。

 自分が飲んでいる薬の名前を知っておくことは大事。たとえば、血圧を下げる薬には、ACE阻害薬、ARBという代表的な二つの薬剤がある。血圧上昇と臓器障害の作用もあるレニンアンジオテンシン系をブロックする働きを持つ薬だ。脂質異常にはスタチン、糖尿病にはDPP―4阻害薬などが有効だ。

(3)適度な運動をする

 心拍数が90~100になるような運動をするのが理想。少し速足で20~30分間、週に4、5回歩くのがよい。心臓病にかかったことがある人は最大能力の40~60%、つまり無理をせずに「ややきつい」と感じる程度で運動をすることが大切。

 運動をすれば、酸素の取り込みがよくなり、楽に動けるようになり、狭心症や心不全の症状も軽くなる。血液の循環や自律神経のバランスが良くなり、不整脈が起きにくくなる。不安やうつからも解放される。

(4)減塩食が基本

 塩分を取ると、血中のナトリウム濃度が上がり、のどが渇くので水分を取る。その結果、血管内の血液量が増え血圧が上がってしまう。

 日本人の1日平均食塩摂取量はかつて13グラムを超えていたが、近年は減少し約10・4グラムとなっている。しかし、これでもまだ多い。特に、心臓病に一度かかった人の再発予防には6グラム未満が理想的である。

 炭水化物を取り過ぎるのも良くない。最初に野菜を食べて炭水化物のご飯を最後に回せば、食欲に応じて食べる量を減らせる。ご飯と麺類を減らすと減量に効果的である。

 1日のアルコール量は、ビールなら小瓶1本かグラス1杯、ワインも1、2杯程度にとどめるのがよい。

(5)ストレスを発散

 競争心が強く攻撃的でせっかちな人は、マイペースでのんびりとした人よりも心筋梗塞になるリスクが高い。

 うつ病と心臓病との関連も指摘されている。落ち着きがなく緊張状態が続く▽疲れやすい▽集中が困難だったり心が空白状態になる▽刺激に過敏に反応し攻撃的になる▽頭痛や肩こりなど筋肉性の緊張が続く▽寝付きが悪く寝てもすぐ目が覚める―の六つのうち、三つ以上が6カ月以上続くなら軽いうつ状態といえる。

 以上のことを参考にしていただき、行動と習慣を変えることにより検査値と運命まで良い方向に変わるよう、健康維持を心掛けてください。

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 さとう・てつや 徳島大医学部卒。岡山大病院を経て、2003年から岡山赤十字病院に勤務。11年から循環器内科部長。日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医、日本内科学会専門医、アメリカ内科学会上級会員。岡山大循環器内科臨床教授。54歳。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年02月16日 更新)

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