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川崎医大公開講座 「救急医療の最前線」

(上段左から)荻野隆光教授、大野直幹准教授(下段左から)八木田佳樹教授、石松伸一副院長

 川崎医大(倉敷市松島)は、創立45周年記念事業として、記念公開講座「救急医療の最前線」を川﨑祐宣記念講堂で開いた。各科の専門医と、同医大卒業生で聖路加国際病院(東京)の石松伸一副院長による講演の要点を紹介する。


救急医療とドクターヘリ 救急医学 荻野隆光教授
積極的治療を現場から
 救命救急では「救命の連鎖」ということが大切。倒れたりけがをした現場での家族や同僚の救命措置、救急隊員の適切な対応、そこから速やかに私たちへバトンタッチしてもらう。これが途切れると救命につながらない場合が増える。

 以前は、私たちは病院で「待っている」しかなかった。ドクターヘリによって私たち医療者が、積極的な治療を現場から開始できるようになった。

 全国に先駆け川崎医大病院が導入したドクターヘリの意義は大きい。片道25分圏内に岡山県内がほぼ入っており、地域医療向上に貢献している。


小児救急医療の未来 小児科学 大野直幹准教授
複数科の連携・協力大切
 「小児科医が少ない」と全国的に騒がれるが、岡山県の場合、対人口比でみれば、他県と比べて小児科医が少ないわけではない。川崎医大病院では「1日24時間、1年365日、いかなる時でも小児患者を受け入れる」を基本姿勢に、日夜取り組んでいる。

 小児救急は、もちろん小児科医だけで担えるものではなく、複数科の連携・協力が大切だ。院内でボーダーレスの「小児救急医療チーム」をつくり、症例研究などを重ね、拡大していきたい。

 将来は当院が中四国規模の小児救急医療の拠点センターになれればと考えている。


脳卒中の急性期診療について  脳卒中医学 八木田佳樹教授
警告症状は顔、腕、言葉
 脳卒中は日本人の死亡原因の上位で、寝たきりにつながることも多い。脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に大別でき、近年は脳梗塞が増えている。

 急性期脳梗塞の治療の第一目標は詰まった血管の再開通。薬で血管内の血栓を溶かす療法では時間が勝負だ。発症後4・5時間以内に治療を開始しなければならず、ということは発症から3・5時間以内に病院に連れてきてもらいたい。

 顔の片側がゆがむ、片方の腕が動かない、言葉が出ないといった脳卒中の警告症状に周囲が気づいてあげること。顔、腕、言葉と覚えておいてほしい。


特別講演 聖路加国際病院 石松伸一副院長
救急現場すべて最前線
 救急医療は医の原点といわれる。救急医療には最前線も後方もない。現場はすべて最前線だ。

 紹介にあったように私は1995年の地下鉄サリン事件で、被害者の救急措置に携わった。多くの被害者に後遺症が残り、私たちは今も健診などフォローを続けている。

 東京では病院が救急搬送を断るケースが多く、119番通報から病院到着まで平均54分と全国で最も時間がかかる。私の病院では「断らない救急」を実践している。各科の協力、手術室、人材など「断ってきた理由」を調べ、上司の協力で一つ一つ取り除いた。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年03月02日 更新)

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