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肺がん治療~最新の話題と正しい情報選択 川崎医大呼吸器外科学准教授 清水克彦

しみず・かつひこ 愛媛県立八幡浜高、広島大医学部卒。日本外科学会専門医・指導医、日本呼吸器外科学会専門医、日本呼吸器内視鏡学会専門医・指導医、日本臨床腫瘍学会専門医・指導医。

 肺がんは現在、がん罹患(りかん)数で2位、がん死亡数で1位であり、難治性がんの代表的な存在です。近年の医学の進歩により多種多様な治療法が開発されていますが、それに比例して非常に多くの情報があふれています。

1 正しい情報選択を

 肺がんの最新治療を求めるにあたり、まず最初に重要なことは「正しい情報選択」ができることです。現在、インターネットで膨大な情報が入手可能ですが、「日本のインターネット上のがん情報で、正しい情報にヒットする確率は50%以下である」との報告があるように、インターネット上のがん情報には注意が必要です。

 では、どうやって「正しい情報選択」を行うか? まず、現時点で最善の医療である「標準治療」は、「診療ガイドライン」に記載されています。最近は医療者用だけでなく、患者さん用の本も発売されています。次に、良い治療として期待される研究段階の「最新治療」は、公的な病院のホームページが情報源になります。今話題のがん免疫療法は「標準治療」ではなく、「最新治療」に属します。

 川崎医大病院においても「臨床試験」が行われています。

 また、「臨床試験」「治験」の他に、厚生労働省が指定する「先進医療」があります。

2 肺がんの最新治療

 肺がんの外科治療の最新の話題は、2cm以下の小さい肺がんに対して肺機能を温存する手術の「臨床試験」が日本で行われ、昨年9月で終了したことです。近い将来、小さい肺がんに対しては小さな範囲の切除ですむ時代が来ることが期待されます。

 肺がんの抗がん剤治療に関しては、数年前までは「非小細胞肺がん」は全部同じがんとして治療していましたが、現在では「扁平上皮がん」か「非扁平上皮がん」や「がん組織の遺伝子発現の有無」を参考にして、多様な抗がん剤治療が行われています。

3 川崎医大病院の取り組み

 リンパ節転移を伴うような進行した肺がん(III期の肺がん)に対しては、手術・抗がん剤・放射線をうまく組み合わせた「集学的治療」という治療成績を向上させる取り組みがなされています。川崎医大病院でも、週に1回、呼吸器内科・呼吸器外科・放射線科(画像診断)・放射線科(治療)の各科から集まって、患者さん一人一人に適した治療を話し合って決めています。

 また、すべての病期の肺がん患者さんに対して、呼吸リハビリ・治療前口腔(こうくう)内ケア、栄養サポート、抗がん剤のための通院治療センター、骨転移に対するリエゾン治療・緩和ケアなど、大学病院の特性を生かした多種多様なチームが肺がん治療に携わり、この難治性がんの治療成績向上・日常生活の質の向上のために日々邁進しています。

 最後に、肺がん治療は進行度・組織型・遺伝子発現など、多くの情報を参考に治療を組み立てています。患者さん一人一人が「正しい情報選択」を行い、「納得のいく治療」を受けていただけるように希望します。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年03月16日 更新)

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