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てんかん食事療法の仕組み解明 岡山大グループ 新薬開発へ期待

井上剛准教授

 薬が効かない「難治性てんかん」の治療法として知られる食事療法が効果を発揮する仕組みを、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の井上剛准教授(神経科学)らの研究グループが突き止めた。糖を分解する脳内の代謝経路の一つを阻害すると、てんかん発作が抑えられることをマウスを使った実験で確認。新薬の開発につながる成果として期待され、20日付の米科学誌サイエンスに発表した。

 難治性てんかんの治療では、脂肪分を多く取る一方、炭水化物を減らすことで分解後のブドウ糖の摂取を抑える食事療法が効くことが知られているが、理由は未解明だった。

 研究グループは、ブドウ糖を分解してエネルギーにする脳内の代謝経路のうち、乳酸が関わる経路がてんかんの発作と密接に絡んでいることを発見。特定の代謝酵素の働きを止めてこの経路を遮断すると、マウスの発作を抑制できたという。

 「スチリペントール」と呼ばれる既存薬にこの代謝酵素の働きを弱める作用があることも見いだした。化学構造を変えれば、より強い効き目をもたらすことが分かり、今後創薬への応用が期待できるという。

 てんかんは、脳の神経細胞の情報伝達で起きる「電気活動」の過剰な興奮が原因とされる。井上准教授は「従来の治療薬は電気活動への作用を狙っていた。代謝経路や酵素に着目することで、新たなタイプの治療薬を生み出せる可能性を示せた」と話している。 

■研究軌道乗せて

 自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)の井本敬二所長(神経科学)の話 正確な実験と緻密な思考に基づく素晴らしい研究成果。食事療法による抗てんかん作用を分子レベルで新たに解明しており、臨床への応用に向け、研究を軌道に乗せてほしい。

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 てんかん 脳の神経疾患の一つ。体のけいれんや硬直、意識障害などの発作を繰り返す。厚生労働省の調査(2011年)では、国内の患者は21万6千人。このうち約3割が既存の薬(約20種類)が効かない「難治性てんかん」とされる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年03月20日 更新)

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