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困っているその症状に漢方薬はどうですか おおもと病院副院長 村上茂樹

 むらかみ・しげき 操山高、鳥取大医学部卒。大阪医科大一般・消化器外科学教室に入局後、大阪・高槻赤十字病院を経て1991年におおもと病院へ。95年から同医科大一般・消化器外科に勤務後97年、おおもと病院に戻り2010年副院長。乳腺専門医、外科専門医、消化器外科専門医、消化器内視鏡専門医、消化器がん外科治療認定医。

■病名で決める西洋薬、病状で決める漢方薬

 症状の原因を見つけて治療するのが西洋医学です(病名治療)。しかし西洋医学だけでは取れない症状に対する漢方薬の効力(病状治療)も捨てたものではありません。我慢していたけど思い切って検査を受けた。でも異常が見つからない。医者も困って“(命にかかわる症状でないから)様子をみましょう”ですませてしまう。そんな経験はないでしょうか。

 ・のどに何かあるような気がして仕方がないのに、耳鼻科でも内視鏡検査でも異常がない。

 ・冷えは漢方薬でしか対処できません。冷えといっても、原因や冷える部位も人さまざまです。全身、足もとだけ、あるいは指先だけ、また足は冷えるのに顔はのぼせると、その人なりの冷えかたはさまざまで、それぞれで漢方薬を使い分けています。

 ・お腹が張るのに大腸内視鏡検査でも異常がない。便秘でよく処方される刺激性の下剤は、常用し使っているうちに量がだんだん増えてきます。高齢の方に多いコロコロ便に対する漢方薬や、お腹の冷えや骨盤内の血流を改善して便通を整える漢方薬があります。

 ・炎症は西洋医学では存在の認識はできても、それを早く治すことはできません。ノロウイルス感染で嘔吐(おうと)下痢をしても、脱水予防に点滴をするぐらいですが、速効で炎症を抑える漢方薬があります。

 ・風邪やインフルエンザは、肩がこって寒気がするひき始めの時から、汗をかいて熱がある時、のどが痛くなってきて、咳(せき)が出て、さらに腹まで冷えて下痢をしている時、また風邪は治ったのに本調子に戻らない、あるいは咳だけ残るなど、それぞれの病期病状にあわせて漢方薬は使い分けます。

 ・さらに処方した漢方薬が薬効を期待した以外の、今までそれほど気にしていなかったから誰にもいわなかった症状までスッキリさせてくれることがあり、そんな時は投薬した方もうれしくなります。

 ・二日酔いに効く漢方薬があります。

 ただし、漢方薬にも注意すべきことはあります。たとえば甘草はアレキサンダー大王の遠征からの脱水予防の薬ですが、飲み過ぎると浮腫が出ることがあります。自然の生薬だから優しいとは言えません。自然は時に人間にきびしい。

 診察室での様子を観察したり、症状を聞いたり、脈に触れたり、お腹を触ったりして処方薬を決めますが、初回の薬で効果を認める人もいれば、改善されるまで次々と薬を変えていくこともあります。もちろん全ての症状が漢方薬で取れるわけではありません。


■漢方薬の印象

 量が多い、くさい、苦い、すぐに効かない、科学的根拠が乏しい。とかくマイナスイメージの漢方薬です。

 ・量が多いのは、植物成分・鉱物・動物性の複合成分の生薬だからです。○○湯と“湯”の字が付いている薬は、空腹時に白湯(さゆ)に溶かして飲むと効果的です。

 ・においは、○○散と“散”の字が付いている薬はアロマセラピーと思って香りをかいでからそのまま飲んでください。

 ・味は、多くの漢方に甘草という甘い成分が入っていますし、その人の症状に合えばどんな苦い薬も不思議と飲めます。子どもでも飲めます。

 ・“○○飲”と“飲”の字が付いている薬は、特にむかつきのある時は、溶かした後冷やしてちびちび飲んでもいいのです。

 ・即効性の漢方薬、あります。

 ・西洋薬のようにひとつだけの成分でないので科学的証明が難しいのですが、古い処方は2000年の歴史があって、長い間人に使われていること自体、それぞれの症状に対する漢方薬の効果が実証されてきたと考えられなくはないでしょうか。

 どうです、少し興味がわいて古い漢方薬のイメージの殻が剥がれたら、お困りのその症状を、漢方薬を処方している先生に相談してみて下さい。

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おおもと病院((電)086―241―6888)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年04月06日 更新)

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