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ウイルス製剤がん治療に成果 岡山大グループ臨床研究

ウイルス投与によるがん治療のイメージ

会見する藤原教授(右端)、白川准教授(右から2人目)ら=岡山大病院

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科(消化器外科学)の藤原俊義教授、白川靖博准教授らのグループは10日、がん細胞だけを破壊する独自開発のウイルス製剤「テロメライシン」と放射線を併用した新しい食道がん治療の臨床研究で、患者7人のうち5人のがんが縮小したり、消失したりしたとする成果を発表した。

 新しい治療法は体への負担が少なく、高齢、持病などで外科手術や抗がん剤投与が難しい患者に治療の機会が生まれるメリットがあるという。実用化に向け、医師が主体となる医師主導治験への移行を検討するほか、米国で近く開かれるがんの学会で発表する。

 グループによると、2013年11月~今年3月、食道がんを患う53~92歳の男女7人に治療を実施。患部にテロメライシン1ミリリットル(ウイルス量100億個)を注射した後、放射線治療を6週間行い、この間に2回、テロメライシンを追加投与した。

 その結果、5人のがんが小さくなったことを確認。うち組織検査の結果が出た2人は、がんが消えていた。

 患者には発熱や食道炎、白血球減少といった副作用が一部で見られたが、程度は軽かった。7人ともリンパ球が減少したものの、放射線治療の中断などで回復したという。

 ただ、効果がなかった2人は死亡し、がんが縮小した5人のうち2人も呼吸器疾患などで亡くなった。

 テロメライシンは、風邪ウイルスの一種アデノウイルスの遺伝子を組み換えたウイルス製剤。がん細胞だけで大量に増殖し、がん細胞を破壊する一方、正常な細胞は傷つけない。放射線治療の効果を高める働きもあるとされる。02年に岡山大が開発し、同大発ベンチャーが米国で行った臨床試験で、一定の効果や安全性が確認されている。

 この日、岡山大病院(岡山市北区鹿田町)で会見した藤原教授は「高齢社会を迎え、体に優しい治療が求められている。できるだけ早く患者さんに届けられる方法を考えたい」と話した。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年04月11日 更新)

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