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(1)肥満と糖尿病 倉敷スイートホスピタル院長 松木道裕

まつき・みちひろ 大分上野丘高、川崎医大卒、同大大学院修了、同大講師、准教授、川崎医療福祉大教授を経て、2012年から現職。日本糖尿病学会専門医、日本内科学会総合内科専門医。

 わが国の糖尿病患者は増加の一途をたどっています。5年ごとに発表される厚生労働省の糖尿病実態調査によると、2012年には「糖尿病が強く疑われる人」と「糖尿病の可能性が否定できない人」を合わせると約2050万人と報告されています。

 糖尿病とは高い血糖値の状態が続くことです。健康な人でも食事などで血糖値は変動します。朝食前の空腹時は70~109mg/dl、食事をすると60~90分後をピークに100~140mg/dlまで上昇します。空腹時が126mg/dl以上あるいは食後の血糖値が200mg/dlを超えると、糖尿病の可能性が高くなります(表1)。同時に測定したグリコヘモグロビン(HbA1c)が6・5%以上なら糖尿病と診断され、その原因を考える必要があります。

 糖尿病には1型▽2型▽その他の原因による▽妊娠糖尿病―の四つのタイプ(型)があります。日本人の場合、90%以上は2型糖尿病であり、このタイプの糖尿病が増えてきています。

 患者数が増加する要因としては、2型糖尿病の発症に関係する生活習慣の変化が考えられます。近年、食生活が欧米化し、食事中の脂肪摂取量は増えています。加えて、車社会の発達などで歩かなくなり、身体活動量は減っています。

 その結果、男性では肥満の人の割合が増えてきており、糖尿病が発症しやすい状況になっています。食事などで摂取した糖質はすい臓のβ細胞から分泌されるインスリンによって肝臓、筋肉や脂肪へ取り込まれますが、肥満になるとインスリンによる糖質の取り込みが低下します。さらに肝臓で糖が多くつくられる状態となり、血糖値は下がりにくくなります(このような状態をインスリン抵抗性といいます)。さらに肥満は糖尿病のみならず、高血圧や脂質異常を併発し、脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の原因となります(図1)。

 肥満があるかどうかの判定には肥満指数(BMI)が用いられます。肥満指数は体重(kg)を身長(m)の2乗で除したものです。肥満指数が25を超えると肥満と判定されます(表2)。肥満のある人は肥満指数22(理想体重)未満の人に比べ、2型糖尿病の発症率は7倍になるといわれています。

 また、糖尿病の前段階である境界型から糖尿病への進展に肥満は関連するとされています。肥満には内臓型肥満と皮下型肥満があり(図2)、内臓型肥満が糖尿病の発症により密接に関与しています。インスリンの働きを悪くするような種々の生理活性物質(腫瘍壊死因子、遊離脂肪酸、レジスチンなど)が内臓脂肪から分泌していることと関連しています。

 元来、インスリンの分泌は欧米人に比べ日本人を含めた東洋人は弱く、中年以降の体重増加によって糖尿病が発症しやすくなるため、肥満には特に注意が必要です。肥満を防ぐ生活習慣の見直しを日ごろ心がける必要があります。



 倉敷スイートホスピタル((電)086―463―7111)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年05月18日 更新)

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