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川崎医科大・植村貞繁教授に聞く 子どもの胸陥没 漏斗胸の「ナス法」手術 短時間で負担、傷小さい

「ナス法」の手術に使うバーを手に説明する植村教授

漏斗胸患者の男児。その後「ナス法」による手術で治療を受けた

 子どもの胸の一部が漏斗(ろうと)のように陥没する病気・漏斗胸。「ナス法」と呼ばれる手術方法が米国で開発され、近年広まっている。国内でいち早く取り入れた植村貞繁・川崎医科大教授(小児外科)は「従来に比べ手術時間が短く、患者の負担を軽減できる。傷あとも小さく目立ちにくい」と話している。

 漏斗胸は、胸の中央にある胸骨や、肋(ろく)軟骨が内側に曲がっているため生じる。原因は不明。ほとんどの患者は乳幼児期から陥没があり、成長とともに目立ってくる人もいる。八百~千人に一人の割合で生じるという。

 通常、痛みや息苦しさなど自覚症状はないが、肺活量や心拍出量が少なく、乳幼児期は肺炎や気管支炎を起こしやすい。陥没が大きいと、心臓や肺が圧迫され影響を受ける場合があり、手術が必要になる。深刻なのは「水着になりたくないなど、外見にコンプレックスを抱く患者が多い」(植村教授)ことだ。

 従来の手術は、陥没を直すため内側に曲がった肋軟骨を切除したり、胸骨を切り離してひっくり返していた。大がかりな手術で五時間前後かかり、術後も胸の正面に大きな傷あとが残る問題があった。

 ナス法は一九九八年に米国の医師が発表し、開発者の名前から命名された。植村教授は開発者の下で研修を受け、同年から国立岩国病院(山口県岩国市)で実施。昨年十一月に川崎医科大(倉敷市松島)へ移って以降も含め約二百四十件を手掛けた。

 手術に使うのは、ステンレス製の平らなバー。患者の胸の大きさ、形に合わせ術前に弓形に曲げておく。手術では両わきの下を二、三センチずつ切開し、内視鏡で胸の中を見ながら陥没した骨の内側にバーを通し持ち上げる。最後にバーの中央と両端を骨に糸で固定する。手術時間は平均四十分。

 術後の痛みは麻酔でやわらげ、十日から二週間で退院する。三カ月後には普通にスポーツができるようになるという。ただ胸を強く打つ柔道やラグビーなどは避ける。

 バーは骨が矯正され陥没が治るまで二、三年間入れておき、再び手術して引き抜く。

 手術は、骨が軟らかく矯正しやすい五~十歳が最適。三十、四十代で手術を受ける患者もいるが、体が大きいためバーを二本に増やす必要があり、手術時間が子どもの倍かかる。骨を完全に矯正するのも難しくなる。

 ナス法は、手術が二度必要なのが欠点。軽度の変形が残る患者もいる。始めた当初は、術後に胸の中でバーがずれる場合があったが、最近は技術が向上しほとんどなくなったという。保険が利く。

 全国から患者が治療に訪れる植村教授は「夏休みに手術を受ける子供が多い。胸の形が直ると、性格も活発になる」と効果を語っている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年05月07日 更新)

タグ: 健康子供

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